李御寧『「縮み」志向の日本人』

第29回

浜崎 洋介 文芸評論家

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日本人の強みとしての「縮み」

 2025年、訪日外国人は過去最高の4268万人を記録した。この日本人気の理由は、街の清潔さ、静けさ、各種公共交通機関の時間の正確さ、日本人の礼儀正しさなどらしいが、では、世界の中でも特筆される日本人の「細やかさ」はどこから来るものなのだろうか。

 そんな日本人の謎を解く上で、重要なヒントを与えてくれる本がある。李御寧の『「縮み」志向の日本人』である。

李御寧『「縮み」志向の日本人』(講談社学術文庫)1650円(税込)

 この場合、著者が外国人、しかも欧米人ではない韓国人であることがポイントである。というのも著者は、これまで欧米との比較で論じられてきた「甘え」「米食」「タテ社会」などは韓国にも当てはまる特性であり、そんなことでは日本人の謎には迫れないと言うからだ。

 では、他のアジア人には見られない、日本人特有の性格とは何なのか?

 それを著者は「縮み」志向だと言う。たとえば、それは韓国人意識さえ持たない日本統治時代の朝鮮で初めて気づかれたものだった。幼心で聞いた一寸法師や桃太郎や金太郎や牛若丸の物語、これら「小さな巨人」たちの物語は、韓国では決してお目にかかれないものなのだ。

 しかも周囲を見渡すと、そこにあった日本の日用品(茶碗、座布団、膳、酒盃、扇)は、韓国の3分の1であり、さらに日本人は、そこに緻密な細工を施して「うつくし」(くはし)と言い、その逆を「不細工」と呼んでいたのである。

 いや、そう考えると、「縮み」志向は日本文化全体を覆っていることに気がつく。ひな人形、文庫本、豆本、短歌、俳句、短編小説、扇子、石庭、盆栽、折詰弁当、茶室、折畳傘、トランジスタ、ウォークマンetc。これらは全て日本発祥か日本で縮められた物たちである。

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source : 文藝春秋 2026年8月号

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