回帰した「冷戦下の暴力」への依存症
2022年のウクライナ戦争から、26年のイラン戦争への急変を見るとき、歴史や思想に基づいて「時代」を診断する虚しさが、ただ胸にこみ上げる。
前者を起こしたのはロシアだから、冷戦に「敗れた側」の怨恨が原因だと位置づけるのは妥当に思えた。しかし後者は「勝った側」だったはずのアメリカが、イスラエルと組んで始めている。
むしろ敗者と勝者を問わず、人間には殲滅すべき「敵」を求めてやまない本能があるのだろうか。いちどはルールで暴力を封じる秩序を築いても、必ずそうした破壊衝動に襲われる人類の愚かさは、どこか禁断症状の発作めいている。
主に1995年に連載された、小説『かくも短き眠り』の舞台はルーマニア。旧共産圏ではユーゴスラビア内戦や、チェチェン紛争がすでに起きていた。

だがそれらは「民族紛争の段階」に留まり、該当する地域に封じ込められた衝突にすぎないと、作中の人物は言う。そうではなく「壁が崩れるまえのように世界中が睨みあうことが重要なんだ!」と、冷戦下を懐かしむように彼は叫ぶ。
そう聞けば読者は元KGBのプーチンのような、社会主義の下での「体制派」が抱く復讐心を連想する。独裁者チャウシェスクが残した爪痕が、地獄めぐりのように綴られた後ではなおさらだ。
ところがこのビッグフォード少佐は、むしろルーマニアの体制転換にも参与した、秘密部隊のアメリカ人だ。そんな彼が数年後には、チャウシェスクの親衛隊の残党を集めて蜂起し、新たな冷戦への狼煙を東欧から上げるのだと吠える。
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