「善き生」を語れないリベラル
今回の衆院選での高市自民党の圧勝は、それ以上に中道改革連合=リベラルの敗北だった。しかし、それは単なる日本の右傾化の結果でしかないのか? それとも、それは一つの歴史的必然なのか。
それを考える上で又とない良書がある。佐伯啓思氏が2005年に上梓した『倫理としてのナショナリズム』である。

佐伯氏は、まず1970年代に実現した一億総中流社会を、ポスト工業化した大衆消費社会の到来、つまり、個々人の趣味の戯れ(ポストモダン的差異の戯れ)が実現した時代として捉える。そして、1980年代、そこに重なるようにして現れてきたのが新自由主義と、その結果としてのグローバリズムだったのだ。
グローバリズムとは、要するに、資源価格と人件費の高騰による利潤率の低下に直面したアメリカが、その経済戦略を国家による産業政策から、規制緩和による情報・金融業政策(世界市場における自由競争)にシフトさせたところからはじまった一連の流れのことを指す。
が、その惨憺たる結果については、すでにご承知の通りだろう。製造業に携わる地方労働者(中間層)と、IT・金融業に携わる都市民(エリート)との間の格差と分断、それによる国民的規範の溶解。そして世界の工場となった新興国(中国とロシア)と先進国との間の軋轢と、それによる国際秩序の動揺etc……。
しかし、この間、目の前の悲惨な現実に対して、リベラリズムは適切な手を打つことが全くできなかったのだった。
というのも、リベラルが語る「平等」は、飽くまで「個人の自由」を補完するための概念でしかないからである。つまり「自由」を超える価値についての言葉を持たないリベラルは、自らの「条件」を深く問い質すことができないのだ。
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