ステージ4のがん患者となったベテラン医療ジャーナリストが読者に伝えたいこととは――。手記「医療ジャーナリストのがん闘病記」(文藝春秋2023年7月号)が大きな反響を呼んだ長田昭二氏(58)が、「文藝春秋 電子版」オリジナル連載で、自身の病をレポートする。
盛大な“生前葬”が始まった
10月29日(日)、東京・新宿にある新宿文化センター大ホールで行われた「ベートーヴェン交響曲第九番演奏会」(指揮・角田鋼亮、管弦楽・東京フィルハーモニー交響楽団)に、合唱団員として出演した。
この連載の前々回でも書いたが、新宿文化センターの大改修前最後の「第九」、そして、僕にとっても27年前から歌い続けてきた「第九」の最終回となる公演だ。
最近は「生前葬」を行う人が増えていると聞く。出席したことがないのでどんなことをするのかは知らないが、葬式ほど暗くなく、結婚式ほど明るくもなく、友人知人や親類縁者が集まって、人生の最終盤にいる“主役”をチヤホヤするパーティー――といったところだろうと想像している。
僕は今回の「第九」演奏会を、自分の生前葬として位置付けていた。もちろんそんなことを主催者に言えば「縁起でもない」と叱られるので黙っていたし、来てくれる“僕のお客さん”にも言わなかった。勝手に自分の頭の中で、「この演奏会を生前葬にしよう」と考えていただけのことだ。
最終的な動員数は分からないが、ステージから見る限りでは、約1600人収容のホールの8割程度は埋まっていた。そのうち30人が僕の関係者。仕事仲間10、友人8、親類7、医療関係4、高校時代の恩師1という内訳だ。この30人は演奏会を聴きに来ただけなのに、自分たちにそのつもりはないまま、知らないうちに僕の生前葬に列席させられていたのだ。どこに災難が転がっているかわかったものじゃない。
「“第九”の友は真の友」とは僕の名言である(「深夜の友は真の友」は五木寛之先生の名言だが、パクリではない。偶然です)。普段どんなに仲よさそうに接している人物でも、「第九」の演奏会に来てくれなければ、それはその程度の付き合いなのだ――という、合唱団員にのみ適用される格言なのだ。
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