日産自動車が2025年3月期の連結決算で7500億円もの巨額最終赤字になる見通しだ。昨年末から経営統合交渉をしていたホンダと破談したが、もはや日産単独で生き残るのは至難の状況だ。加えて、トランプ政権による関税アップは、日産のみならず、ホンダをも苦しめている。この危機をきっかけに、両社の再接近はあるのか――。
トランプ関税は日本の自動車業界を揺るがした
トランプ関税は日本の自動車業界を大きく揺るがしている。米ワシントンで4月17日(日本時間)、日本政府が派遣した赤澤亮正経済再生担当相が米国政府と初交渉に臨んだが、自動車への追加関税の撤廃について、赤澤氏は「強く申し上げた」と言うものの、現状では撤廃への見通しは立っていない。
今後の展望が見えない中、日産自動車とホンダがいち早く関税対策を加速させている。かねてより過剰設備に悩む日産は、リストラ策「ターンアラウンド計画」で、米テネシー州の工場でのSUV「ローグ(日本名エクストレイル)」の生産ラインを縮小する予定だったが、撤回した。ローグは九州工場でも製造しているのだが、関税対策で米国での減産を取りやめたので、その分は九州で生産を減らすことに決めた。
また、ホンダはUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)による関税免除を活かして、次期型シビックを米国からメキシコに生産移管する計画だったが、取りやめた。加えて、カナダ工場で生産している一部車種も米国内の工場生産に移管することを検討している。

日産が持て余す米国工場が活用できないか
しかし、ホンダの米国における主力生産拠点であるオハイオ工場は、「すでにフル稼働の状況にあり、カナダからの移管分を受け入れられる状況にない。関税を避けるために米国生産を増強したいが、即座には対応できない」(ホンダ関係者)という。
そこでホンダでは、日産が持て余している米国工場が活用できないか、検討に入っているようだ。日産は米国で100万台余りの生産能力を保有していると見られるが、2024年は52万台しか生産しておらず、半分以上の設備が稼働していない。昨年8月に日産との業務提携を発表して以降、ホンダでは一時期、日産の米国工場の一部を買い取る案さえ検討されていた。
ホンダと日産は2月13日、共同持ち株会社設立による経営統合交渉の打ち切りを決めたものの、両社とも業務提携は継続する意向を示しており、4月半ば以降、改めて業務提携の交渉を再開したという。そこで再び、ホンダによる日産米国工場の活用案が浮上してくる可能性がある。「トランプ関税」が予期せぬ呼び水となって、両社が再接近するかもしれないのだ。
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