ホンダとの協議を蹴った“プライド高き”日産に残された4つのシナリオ

井上 久男 ジャーナリスト

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「ホンダから見てスピードが遅いと映った」

 2月13日午後、ホンダと日産は経営統合交渉に向けた覚書を正式に白紙撤回する。

 これに先立つ2月6日午前10時過ぎ、日産自動車の内田誠社長を乗せた車が、東京・青山にあるホンダ本社に到着した。内田氏は、ホンダの三部敏宏社長に対し、経営統合交渉の打ち切りを正式に伝えるために訪れたのだ。

 昨年12月23日、両社は共同持ち株会社設立による経営統合に向けた交渉を開始したと発表した。同日付で統合に向けた基本合意書(覚書)を締結していたが、それを破棄することになった。

 なぜ両社は決裂したのか。そこに至るまでの経緯は『文藝春秋』3月号、および『文藝春秋PLUS』に掲載の「日産鈍感力社長にいら立つホンダ暴れ馬社長」で詳述したが、最終締切時点では協議打ち切りにまで至っていなかったため、盛り込めなかった情報も多い。本稿では、破談決定以降の最新情報を紹介しつつ、ホンダと日産が決裂した真相と、その後の展開について迫ってみたい。

日産の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長 ©AFP=時事

 まず振り返っておくと、経営統合はホンダ主導で進められ、新たに設立される共同持ち株会社の社長と取締役の過半数はホンダが指名することが決まっていた。その持ち株会社の下に、日産とホンダが事業会社としてぶら下がり、人事権などの経営判断は各事業会社が裁量を持つ方向だった。すなわち、持ち株会社はホンダが主導しても、その傘下に置かれる日産の経営にホンダが直接関与はしない形を取っていた。

 ただし、その条件としてホンダは日産に対して、(リストラして反転攻勢に出る)「ターンアラウンド計画」の着実な実行を求めた。日産は、収益源である北米事業が不振で、全社的に過剰設備にも悩む。昨年11月7日、全社員の7%に当たる9000人、生産設備の20%をそれぞれ削減するなどのリストラ策を発表していたが、ホンダ側はさらなるリストラ策と素早い実行を求めていた。

 しかし、日産から納得のいく説明はなかった。「ホンダから見てスピードが遅いと映ったようだ」(関係者)。加えて、日産から「工場閉鎖」など大胆なリストラ策が提示されなかった。日産が進めているリストラ策だけで、果たして経営再建が可能なのかとの疑念が、ホンダの経営陣内で強まっていった。

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