日産ホンダ三菱連合はトヨタ連合に対抗できるか

「クルマのスマホ化」で変わる自動車業界

井上 久男 ジャーナリスト
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 ホンダの三部敏宏社長と日産の内田誠社長が2024年8月1日、共同記者会見し、電気自動車(EV)領域を中心に協業することを発表した。EVの車載OS(基本ソフト)、蓄電池、モーターとそれを制御するパワー半導体などが一体化したイーアクスルで設計を共通化し、蓄電池については相互供給も行う計画だ。

 人体にたとえると、車に指令を送る車載OSは「頭脳」、蓄電池は動力部分にエネルギーを送る「心臓」、動力部分となるイーアクスルは「手足」と言える。両社は車の基本性能に関わる根幹で手を握ることになる。

EV分野を中心とする事業協力について記者会見し、握手する日産自動車の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長(2024年8月1日) ©時事通信社

 次世代EVは、別名「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV=ソフトウェアで定義される車)」と呼ばれる。これまでの内燃機関車から大きく変化し、パソコンやスマートフォンのように車載OSによって中央制御されるようになる。

 この「クルマのスマホ化」により、自動車各社はハードではなく、ソフトウェアの優劣で商品の差別化を図る戦略を描いている。米アップルなどに次ぐ世界3位のスマホメーカーである中国の小米(シヤオミ)が北京に新工場を建設し、24年から高性能なEVを自社開発・生産し始めたのは、そうした流れの象徴と言えるだろう。

 そこで勝ち残るためのカギの一つが、開発のスピード力と、莫大な開発費を回収するための規模力だと業界では言われている。8月1日の会見では、両社の協業に日産が34%の株式を保有する三菱自動車が参画することも表明。さらなる規模拡大を狙って「3社連合」成立に向けて本格的に動き出す。

 3社の23年度のグローバル販売は計約837万台。子会社のダイハツ工業と日野自動車を含めて1109万台を売って世界首位の座を維持するトヨタ自動車グループの背中が見える位置取りができ、規模では独フォルクスワーゲングループに次ぐ世界3位の自動車連合となる。

「3社連合」成立は、日本の自動車産業を支える下請け部品メーカーにも利点がある。自動車ビジネスを城郭にたとえると、消費者向けの最終商品を持つ完成車メーカーは「天守閣」、部品メーカーはそれを支える「石垣」と見て取れる。両者の競争力がともに向上して初めて日本の自動車産業の力は維持できる。

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