脱炭素の歴史的転換に遅れるな

問題は食糧とエネルギーだ

森川 潤 NewsPicks ニューヨーク支局長
ニュース 社会
森川潤氏

 この1年は、世界と日本の命運を決定的に分かつターニング・ポイントになるかもしれない――。そう本気で感じられるほど、2022年から年明けにかけての世界の「脱炭素」の動きは凄まじかった。私の著書でいう、脱炭素を追い風にする企業群「グリーン・ジャイアント」の時代がいよいよ到来したといえる。

 最初のきっかけは、ロシアのウクライナ侵攻だった。この戦争によって、これまで天然ガスをロシアに依存していた欧州各国は、さらなる再生可能エネルギー導入に踏み込むこととなった。要するに、これまで欧州は「脱炭素」の文脈で再エネ化を進めていたのが、そこにロシアに依存しない「エネルギーの国産化」の必要性が加わったのだ。

 例えば、英国は、2030年までに電力の95%を、原発を含む低炭素電源へと移行し、ドイツは同年までの再エネ比率を80%まで引き上げる目標を法制化した。

 そして、脱炭素では出遅れていた米国でも歴史的な動きがあった。8月に、脱炭素化に向けたインフラ整備に約60兆円をつぎ込む法案が可決されたのだ。もちろん投資先の中心は再エネや電気自動車(EV)であり、新たな脱炭素イノベーションにも巨額の資金が注ぎ込まれる。

 これらが意味することは何か。欧州や米国では、今や火力発電より安くなった再エネをてこにインフラを一新し、次なる経済成長の機会を「グリーン化」に求めていくことで決着をつけたということだ。

 このように2022年は、歴史的な1年だったが、翻って日本を見ると、そうした機運は全くない。むしろ、戦争の影響でウクライナが停電危機に陥ったのを受け、欧州とは逆に再エネは批判の的になり、脱炭素という言葉も下火になっている。

 日本の現状には、もちろん理由がないわけではない。特に、再エネへの拒否感が生まれた背景の一つには、2012年に民主党政権が制定した「再エネ特措法」がある。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : ニュース 社会