「ワイマール化」する西側世界
80年を迎えた第二次大戦の「戦後」が、いよいよ世界で壊れ始めている。
2月下旬のドイツの総選挙では、ネオナチ的な傾向を含む極右政党(AfD)が第二党に躍進した。投票前には、従来は絶対のタブーだった同党との協力を、部分的にだが容認する動きも議会で見られ、大規模な抗議デモまで発生した。
こうしたとき、人はオリジナルのナチスを台頭させた「ワイマール共和政の崩壊」を思い出す。そして実は、そこから学べる教訓は、他の国にも共通だ。

過激な社会変革はつねに、いまある秩序そのものが「まちがっている」とする発想から生まれる。ナチスの登場以前からワイマール共和国は、右に帝政回帰を望む国家人民党、左にソヴィエト(労兵協議会)に基づく統治を唱える共産党という異物を抱え、不安定だった。
今日も民主政に倦(う)んだ国では、資本主義が「そもそも」おかしい、議員の選挙とは「別の」民主主義がある、「究極的には」国家は要らないといった思いつきが持てはやされる。ワイマールとの違いは、遊びでなく本気で、極論を政策に実装する政党が出てくるかだけだ。
極左勢力の蜂起に悩む共和国の諸政権は、著名なローザ・ルクセンブルクの虐殺をはじめ、実力行使での鎮圧を軍隊や自警団に依存した。敵との対話は不可能だから「暴力で潰そう」とする発想は、ヒトラーの独創ではなく、長年の間にマンネリ化し国民も慣れきっていたのだ。
SNSで異なる意見をブロックし、嫌いな識者は「TVから消せ」と叫び、ウイルスの感染も海外での戦争も「力で抑え込め」としか考えない私たちの感性もまた、当時のドイツに近づいている。
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