カーク暗殺とバンスの野望

特集 日本人ファーストと欧米の失敗

冨田 浩司 前駐米大使
ニュース 社会 政治 国際

若き政治活動家の死はトランプ主義の転換点となる

 チャーリー・カーク(享年31)が非業の死を遂げた直後、J・D・バンス副大統領(41)はX(旧ツイッター)にその死を悼む長文の投稿を行った。その中で、彼は2人の出会いが政界に入る前の2017年に遡ること、政治のみならず、スポーツや人生について語り合う仲であったことなどを振り返り、友情の深さを印象付けた。

 バンスの回想の中で興味を引いたのは、彼が上院議員選挙への出馬を決意した際に背中を押し、ドナルド・トランプ大統領の長男であるドン・ジュニアとの間を取り持ったのがカークだったことだ。

31歳の若さで亡くなったカーク氏 Ⓒ時事通信社

 バンスは2016年に自伝的な社会評論、『ヒルビリー・エレジー』を出版したあと、政界進出への関心を深めていくのであるが、当初はトランプに対して批判的な「ネバー・トランパー」として知られていた。そのため敵対者に寛容とは言えないトランプがバンスの出馬を支持した背景については様々な憶測があった。今回明らかになった経緯は、バンスが今日の地位を築く上でカークが想像以上に大きな役割を果たしていたことを示す。

 同時に筆者は、トランプ主義陣営の中にあっても傑出した才能に恵まれた2人の関係は、個人の友情の次元を超え、この政治運動の将来に深いかかわりを持つと考えている。そしてカークの死をめぐる米国内の動きは、トランプ主義の次に来るべきものの姿を垣間見せているように思える。

 本稿では、2人がその過程で果たす――カークについては、果たすはずであった――役割を吟味するとともに、それを通じ浮かび上がってくるトランプ主義の将来について考察してみたい。

シンビオシスとしてのトランプ主義

 バンスとカークの役割を分析する前に、トランプ主義の現状について簡単に考察してみたい。

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source : 文藝春秋 2025年11月号

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