監修の生坂氏に問い合わせたところ「原作は総合診療の本質を突いた普遍的な魅力を持つ作品ですが、医学は日進月歩であり、現時点での正しい情報を伝えるために、原作のコンセプトを損なわない範囲でアップデートに努めています」と語っている。

たとえばコミックでは、線維筋痛症と診断した徳重が「膠原(こうげん)病科へコンサルトに出し」「線維筋痛症の治療経験を持つ医師に預けた」とある。確かに以前は膠原病科が積極的に診ていた時期もあったが、現在は、膠原病科は関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患を診察・治療する内科なので、線維筋痛症は専門外ということになっている。

ドラマでは、「徳重が提示した治療方針にもとづき、自宅近くのクリニックで治療を受けることになった」と変えられていた。だいぶ改善されたとは思うが、本来は、集学的痛みセンターに託さなければ、満足の行く治療を受けることはできない。

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この件について生坂氏は、「原作に基づいた脚本部分は修正困難なこともありますので、その辺りはご容赦いただききたく思いますが、影響力の大きいドラマになりそうですので、全身痛の患者はすべからくリウマチ・膠原病科で薬物療法を受けるべきと誤解されないよう、とりあえず総合診療科を中心に集学的に診るような流れに作り直しました」とのことだった。

集学的痛みセンターは、大学病院を中心に全国で十数カ所しかなく、知名度も低いので、テレビドラマでは、これが限界なのかもしれない。

総合診療医をめざすのは全体の3%

残念ながら現在、毎年1万人の医学部卒業生のうち総合診療医をめざすのはわずか3%、300人しかいない。社会的認知度が低い上に、他の診療科から「所詮各診療科のつなぎ役」「幅が広いだけの器用貧乏」などと揶揄されるせいもあるのだろうが、「原因不明の疾患」のゲートキーパーでもある総合診療医が増えないことには、適切な慢性痛医療にアクセスできる患者も増えそうにない。