黒岩の“謎の病気”の正体は「線維筋痛症」だ。

線維筋痛症は、全身に激しい痛みが起こる全身的慢性疼痛疾患で、人口の1.66%、約200万人の患者がいると推定されている。原因は不明で、画像診断などでは異常がなく、検査法も確立されていないことから診断が非常に難しいため、患者は診断がつくまで、何年にもわたり何カ所もの医療機関を渡り歩いているケースが多い。

第1話の患者・黒岩百々もそうだった。

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ドラマ制作に協力した患者の実話

デザイナーの黒岩は、上司の過剰な欲求や期待にボロボロになりながらも、大好きな仕事に打ち込んできた。しかしある日、原因不明の全身痛に襲われる。いくつもの病院や診療科をめぐり診察を受けるが、検査をしても異常は見つからない。

処方される薬も全然効かないし、休養に努めても何も変わらない。座っているだけでも痛い、体が震えるほどのつらさを医師に訴えても「ストレス」「気のせい」と片付けられ、会社では「ずる休み」「本当は陰で転職活動をしているのでは」と疑いの目を向けられる始末。

追い詰められ、トイレでうずくまり、嗚咽する。

そんな中、徳重の丁寧な問診と鋭い観察眼により、黒岩の症状が「線維筋痛症」であることが判明する。「やっと病気だって言える」と涙を流す百々に、徳重は「頑張られたんですね」「僕は信じています」と優しく声をかけた。

仲里依紗の迫真の演技に、SNS上では、「線維筋痛症」患者を始め、原因不明の病に苦しむ人たちから、「仲里依紗さんが自分と重なって涙が止まらなかった」「トイレで泣く姿は自分を見ているようだった」「何年間もドクターショッピングして、どの病院でもどの医者にも原因不明と言われた」「生きているだけで全身が痛いのに誰にも分かってもらえなかった」など共感と称賛の声があふれた。

「気のせい」とあしらわれ、同僚から理解されなかった

実は4月、筆者は本作で監修を務める生坂政臣氏の依頼を受け、制作陣に線維筋痛症の患者を紹介した。生坂氏は千葉大学医学部附属病院の総合診療科を立ち上げ、現在は一般社団法人日本専門医機構で総合診療領域の担当委員長として制度運営にも関わっている。