安倍晋三元首相銃撃事件を笑っていたという政治部記者
私の目がくぎ付けになったのは「政治部はアンタッチャブル」という強力な言葉だ。新聞の政治部ってそんなにエラいのか。まるで旧日本軍の暴走みたい。日本の政治は自分たちが動かしていると勘違いしていないか? という先ほどの答え合わせのようだ。
そういえば、政治部と聞くと思い出すエピソードがある。『絶望からの新聞論』という本で明かされていた。著者の南彰氏は朝日新聞の政治部にいた記者だった。南氏によると安倍晋三元首相銃撃事件が起きた深夜に、
《参院選報道を仕切っていた先輩の政治部デスクが突然、ニタニタしながら近づいてきて、「うれしそうだね」と話しかけてきたのだ。》
朝日新聞の政治報道の中核を担っている人間が事件を笑っていたという。衝撃的だ。
《人の命を暴力的に奪う殺人と、言論による安倍政権批判との区別もつかない状況に慄然とした。「あなたのような人間は政治部デスクの資格がないから、辞めるべきだ」そう指摘した。しかし、「僕、辞めろって言われちゃったよ」と茶化して何の反省もなかったどころか、その後もしつこくつきまとわれた。》
読んでいてゾッとした。安倍政権の振る舞いを書いてきた南氏に「うれしそうだね」とニタニタ声をかけてきた朝日の上司。感覚がどうかしている。一方で時の政権や権力者を批判したり声を上げて抗議する人びとを冷笑して茶化しているようにも思える。朝日新聞の政治部トップはこんな感じなのかと驚いた。つい3年前の話であるから今も似たような状況なのだろうか。南記者は朝日新聞を退職して琉球新報に移籍した。政治部記者とは何かを考えさせられた。
さて今回の石破退陣報道の件、もし8月末までに退陣表明がなければ読売新聞と毎日新聞は説明をしたほうがよいのでは。誤報があれば訂正するという態度も“信頼できるメディア”の裏付けになると思うのです。
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文春オンラインで好評連載のプチ鹿島さんの政治コラムが一冊の本になりました。タイトルは『お笑い公文書2025 裏ガネ地獄変 プチ鹿島政治コラム集2』。
