着心地重視の傾向は、ワコールやトリンプも同様だ。ワコールでは、2020年に発売したブラトップ「くるしゅうない(現:シンクロブラトップ)」が、シリーズ累計販売数130万枚を突破(2025年2月時点)。2025年春夏には、2016年に誕生したブランド「GOCOCi(ゴコチ)」を「ノンワイヤーでおしゃれを思い通り楽しむ」というコンセプトにリニューアルした。

 トリンプでも、2013年から展開する着心地重視の「sloggi ZERO Feel(スロギー ゼロフィール)」シリーズが累計販売枚数1200万枚と好調(2025年3月末時点)。同シリーズのブラジャーは全てノンワイヤーだ。

 ブラジャー自体の着心地を追求するだけでなく、最近ではノーブラで着られる服という大胆なコンセプトの新ブランドも登場している。

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「ノーブラで着られる服」が登場した背景

 2024年に誕生したブランド「no-bu(ノーブ)」は、ノーブラで着られる「ブラレスウェア」をコンセプトに掲げる。2024年、25年と2度にわたって応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」で販売し、2025年は目標の30倍以上となる購入金額を達成。ブラジャーを着用しないという選択肢を求める女性が多いことが明らかになった。

ブラジャーを着用する必要がなく、素肌に1枚で着られる「no-bu」のワンピースとTシャツ 写真提供:キャンプ

「開発のきっかけは、フィンランド旅行です。現地では、ノーブラで街中を歩く女性が多く、販売している女性用水着にもパッドが入っていないんです。日本とは全然違うなと驚きました。大好きなマリメッコの水着を購入したくても『日本では(乳首の突起が目立つので)着られない』とあきらめました」(鈴木氏)

筆者が2020年にフィンランド・ヘルシンキで見かけた水着。これも胸パッドが入っていない(筆者撮影)

 旅行後、榊原氏と鈴木氏は「ブラジャーの在り方」に着目。調査すると、約7割の女性が日頃着用しているブラジャーに不満を持っていた。そこで、女性が快適に過ごす新たな選択肢として、ノーブラで着られるTシャツを製作することにした。

開発で苦労したポイントは……

 開発では、バストトップの隆起を押さえつつ締め付け感をなくし、外出時にも着られるデザインにするよう留意。バストが当たる部分に、やわらかいウレタンパッドと凹凸感のある裏地を重ねて縫い付け、薄手ながら隆起をカバーする仕様としている。

no-buのTシャツはバストトップが全く目立たない 写真提供:キャンプ

「何度も改善を重ねて、現在の仕様に行き着きました。Makuake(マクアケ)で発売した第1弾では、『パッドの縫い目部分が隆起して、乳首のように見えてしまう』『パッドの長さが足りない』といった不満の声もいただきましたが、そうしたフィードバックを改善したのが最新製品です」(榊原氏)

 バストを支えず、快適性に振り切ったno-buのコンセプトは「ありそうでなかった」と支持を得た。購入者は30代後半から50代の女性が中心で、自宅やジムの帰り道、温泉・サウナの後など、リラックスしたいタイミングで着用する人が多いという。

「自宅で着用する方が、これほど多いのは意外でした。夫や息子など家族の目が気になるけれど、締めつけ感からは解放されたい。そうしたニーズを持つ方にも刺さったようです」(鈴木氏)