支援する側とされる側の立場を両方経験した現在、支援窓口への不信感は氷解している。しかし当時ははしごを外される思いを何度も経験した。包容力のある笑顔で手招きするような雰囲気にも違和感を覚えた。それゆえに自分が作る場所は「支援らしくしない」し、過度に飾り立てて寄り添う雰囲気を高めるような「温かみのあるデザインにしない」。すなわち、「少年少女が『うざい』と思うことはしない」ことを徹底した。

第3の家族で公開している事業コンセプト

活動を公にしてこの道一本で活動

 利用者は順調に増えていったが、世間からはあまり理解されないだろうとの思いはなかなか拭えなかった。自らの家庭の悩みを周囲に伏せていたから、gedokunを運営していることも隠していた。

 しかし卒業前に一念発起。「グッドデザイン・ニューホープ賞(2022)」に応募することで活動を公にすることを決めた。友人や教授には驚かれたが、対話を続けるうちに受け止めてもらえるようになったという。

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「虐待までには至らない家庭問題は、『お前が弱いのがいけないんじゃないか』みたいに言われて否定されるかもしれない。そういう気持ちがあって周囲に言えなかったんですけど、どこかで認めてもらいたい思いもありました。それで賭けに出たのがニューホープ賞でした」

 最優秀賞を受賞したのは社会人となった2022年の年末。応募総数414点のなかで見事トップに選ばれた(※3)。

「第3の家族」というフレーズはこのときに作り出したものだ。多くの人が家族と呼ぶ血縁家族を「第1の家族」、友人や学校、地域などを「第2の家族」と定義し、それらを補完するような3つめの居場所を作るという思いが込められている。

 当初は家庭環境に悩む少年少女を定額のサブスクリプションで支援する寄付サイトにつけた名だったが、受賞から3ヶ月後に設立したNPO法人の名称に採用していまに至る。

渋谷の拠点にしている「100BANCH」前にて

 法人登記は2023年3月。会社を辞してこの道一本で活動していくことを決めた。現在は横浜と渋谷のシェアオフィスを拠点にして、20人の仲間と連携しながら活動の幅を広げている。

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※1 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000120079.html

※2 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsuhakusyo2024.html

※3 https://newhope.g-mark.org/award/22NHA030001.html

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