NPO法人「第3の家族」は少年少女が自由に悩みを吐き出せる場をオンラインで提供している。その特徴は「寄り添わない」こと。正義圧も道徳圧も温かみもいらない。このコンセプトで突き進む背景には、奥村春香代表の実体験――弟の自死がある。(全2回の1回目/続きを読む)
◆◆◆
学校が始まるまえに「消えてしまいたい」・・・93.1%
学校生活を負担に感じている小中高生のうち、夏休みの終わり頃に「この世から消えたい」と感じたことがある人は93.1%に上る。
これはNPO法人・第3の家族が7月30日から8月11日にかけてオンラインで実施したアンケートの結果だ。全国の10~18歳のうち、学校が「つらい」「つまらない」と感じている216人から得たもので、8月20日に公開された(※1)。
近年、10代の自殺が増えている。この20年間において年間自殺者数が増加している世代は10代だけだ。2004年は自ら命を絶った小中高生の人数が284人だったが、2024年には529人まで上昇した。厚労省による「令和6年版自殺対策白書」(※2)でも、3章構成のうち1章を割いて小中高生の自殺を取り上げているほど事態は深刻だ。
簡単には解決しないであろうこの問題に、第3の家族は「寄り添わない支援」というコンセプトで向き合っている。中核の事業は、悩みを吐き出すための掲示板サイト「gedokun(ゲドクン)」だ。
親しみやすいデザインもガイドキャラもなく、積極的に支援につなげるような仕組みもない。書き込みには「わかる」と「エール」のリアクションボタンがついているだけだ。そこに中高生を中心に月に平均して7000人が集まり、4年強で累計15万件を超える投稿が積み重なっている。
なぜこれだけ支持を得ているのか。第3の家族を創設した奥村春香さんの歩みを追うことで、その理由が見えてくる。
活動のきっかけは6歳下の弟の自死
奥村さんが生まれたのは1999年。その6年後に誕生した弟とは馬が合い、高校1年の頃までは家族の仲はいたって良好だった。しかし、大学受験が近づいてくると両親は奥村さんの勉強に口を出すようになり、リビングにはギスギスした空気が漂うようになる。家庭が崩壊したと感じたのは高校を卒業した後のことだ。自宅から通える大学に合格したが、両親が望む進路ではなかったのか、頻繁に親子喧嘩するようになった。

