一番多かった反応は「もったいない」
須賀 私の両親は国立大出身で、父はいわゆる“国立推し”なんです(笑)。だからそもそも慶應義塾高校への入学さえも、渋っていたような記憶があります。ただ、母は「いいじゃない、慶應の医学部!」と喜んでいたような。
母の反応が決め手になったわけではないものの、自分なりによく考えて、最終的には「成績が取れているなら行ったほうがいいかな」と思って医学部に進学することにしました。
――大卒後、須賀さんは医師国家試験に受かって初期研修を終えられた後、医療の道へと進まず、アメリカ系コンサルティングファームであるA.T.カーニーに転職されたそうですが、医師への道を捨てたときの周囲の反応はどうでしたか。
須賀 いろいろ言われすぎて誰から何を言われたのか覚えていない部分もあるのですが、一番多かった反応としては、「もったいない」ですかね。同級生はもちろん、先輩からも言われましたし、医師をしている親戚のなかには、私の決断に絶句したまま一言も話せなくなった人もいました。それだけ衝撃的だったのでしょう。
両親については、医師を辞めることは事後報告でした。両親からは「自己責任でチャレンジするなら」と特に反対はされませんでした。
――その決断から数年で、現在運営されているタトゥースタジオを立ち上げられるわけですが、どういう思いだったのでしょうか。
須賀 自分が大切にしている意思決定のプロセスとして、「人と違うことをやりたい」「自分しかできないことをやりたい」というのがありまして。
現状、お客さんがタトゥーを彫りたいと思ったとき、医師による除痛をしてもらえる場所はほぼ皆無です。無麻酔で行うか、あるいは違法にもかかわらず医師免許をもたない者が麻酔を行うケースがほとんどでしょう。
しかし私ならば、タトゥーを入れる際に麻酔を扱うことができます。これはビジネスになると思い、「inklinic」を開業しました。タトゥー自体の施術に関しては、腕に覚えのあるタトゥーアーティストの方々にお任せしています。
――利用者はどれくらいなのでしょうか。

