加えて、急激な人口増加で土砂災害警戒区域の設定が全く追いついていない状況も見てとれる。例えば、関東大震災で700人余が犠牲になったとされる横須賀市から一歩横浜市に入った途端、県による土砂災害警戒区域設定は激減する。
経緯を知る識者によると、国と東京都は2013年までに首都直下地震対策の想定をまとめるに当たって、東京オリンピック(2013年9月に2020年開催が決定し、1年延期)や経済への影響を念頭に、災害想定を最大マグニチュード7.3と、阪神・淡路と同レベルに落としたという。
国の想定死者は約2万3000人。東京都は約6148人として対応を進めているが、能登半島地震で国や県の対応が後手に回った状況をみれば、中央省庁や都の部局が交錯し、ただでさえ人々が住んでいる自治体と働いている自治体が異なる首都圏で、観光客ら流動人口も加わることを念頭に置けば、地震発生による混乱は計り知れない。
空港も新幹線も激しい揺れを経験していない
複数の専門家は「関東大震災の時には地下鉄も首都高速も羽田空港も新幹線も高層マンションもなかった。それらは関東大震災と同様の激しい揺れを経験していない。設計上大丈夫だと言っているが、そんなことは経験してみないと分からない」と不安を隠さない。
ある被災自治体トップは東日本大震災後、取材にこう答えた。
「事前にあんな大規模津波が起こると研究者は言わなかった。そんな研究者を私は信用しない」
平成以降、私たちは多くの地震を経験してきた。関東大震災後、1000年余り前の貞観地震(869年)の記録が注目されたことがある。私たちはあらためて過去の経験・教訓を踏まえて歴史に虚心坦懐に学びつつ、人為を超える自然のすさまじさに思いを馳せ、自分のこととして捉え直して次なる災害に備えるべきではないか。
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