阪神・淡路大震災(1995年。以下阪神・淡路と表記)から今年は30年の節目。あの日、近代都市を襲った「想定外」の揺れとその後の事態は、検証を経て多くの教訓をもたらしたが、以降も地震は各地で多発。その度「想定外」という言葉が繰り返されている。

阪神・淡路大震災発生後の神戸市の様子〔1995年撮影〕 ©文藝春秋

 去年8月と今年1月、気象庁の「南海トラフ地震臨時情報」が出された。いずれも宮崎県沖の日向灘でM7クラスの地震が発生し、その揺れが南海トラフ地震と関連があるかどうか、気象庁の南海トラフ評価検討会が調査するものだ。だが、この想定や備えは果たしてどれだけ実効性のあるものなのだろうか。この国の防災の課題を検証する。(全2回の2回目/はじめから読む)

南海トラフ地震は

 そもそも南海トラフ地震については、太平洋ベルト地帯での巨大地震が破局的な影響を与えうることから、以前から国が検討を進めていた。だが2011年、西日本の南海トラフの800キロより短い、南北わずか500キロの東北の震源域で「国内では起きない」規模と見ていた超巨大地震(M9)が起きた。東日本大震災である。

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 そのことから、これまで南海トラフ地震は最大規模で東海・東南海・南海の3つの震源が連動して起きるとされていたのを、さらに西側の九州・パラオ海嶺まで拡大。日向灘まで入れて4連動として震源域を拡大させた(想定最大Mw9.1、死者29万8000人*)。
*この春、32万3000人から減らした

2024年8月、日向灘を震源とする地震を受け、気象庁は規模の大きな地震が起きる可能性が平常時より高まっているとして、「巨大地震注意」とする南海トラフ地震臨時情報を発表した ©時事通信社

 しかし、ここで問題となるのが過去の歴史。南海トラフ地震はこれまで9回発生していることが明らかになっているが、分かっている限り、日向灘まで含めた連動地震が発生したとの明確な記録がない。

 また、過去南海トラフ地震は東海もしくは東南海での地震が起きたあと、西側の南海地震が連動して発生したと見られる記録はあるが、西側の南海地震が起きたあとに東に連動し、東海地震などが発生したとの明確な事実もない。さらに西側の日向灘での地震をトリガーにして南海トラフ全体に地震が連動するとの想定は、それ自体に疑問符がつく。