なるほど特ダネを出したい気持ちはわかる。しかし逆に問いたいのだ。今回の記事ってそもそも「特ダネ」や「スクープ」なの?と。他紙が石井章議員への捜索を報じたように、1日も経てばわかる話ではないか。

 もう、そういうのを「スクープ」と呼ぶのをやめたほうがよいのでは?

「警察との関係を重視したところもあるのでは?」という解説も

 これが日常化すると情報を得るために権力側と近くなりすぎ、批判ができなくなることはないだろうか。最近で言えば大川原化工機冤罪事件があったが、あの冤罪事件を当初から熱心に報道していたメディアは限られていた。その理由としてメディアによっては警察との関係を重視したところもあるのでは?という解説も記者から聞いた。記者クラブで警察から情報を得るために、関係性を壊さないために。

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首相と面会した山口寿一社長 ©文藝春秋

 今後、読売新聞にこだわってほしいのは他紙より1日早い程度の情報より「なぜ」の深掘りだろう。今回なら国会議員の公設秘書給与不正受給はなぜ起きるのかを徹底的に調査してほしい。

 たとえば読売新聞は、秘書給与を巡っては昨年から今年にかけて相次いで刑事事件に発展する事態に注目していた。

《国民の「政治離れ」の影響で寄付金などの収入が減少傾向にある中、事務所にとって運営の助けとなる秘書給与の重要度が相対的に増していることが、その背景にあるとみられる。》(8月28日付朝刊3面)

 そして「政党に対し、所属議員の秘書の勤務状況を定期的に調査させるなど、公設秘書の活動実態を透明化し、国民の監視の目を強める仕組みの構築が求められる」との専門家コメントを載せていた。これを読むと秘書の勤務状況がまだ不透明なのかと驚いた。実態を多角的に掘り下げ、問題提起を次々にしてほしい。それこそが組織ジャーナリズムの持つ「武器」だと思うのです。

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