読売は日頃から政府の方針や政策、または検察の捜査情報などを他紙より早く報じることが多かった。それが自分たちの武器であると自負しているようだった。たとえば9月1日の一面でも「広域圏連携へ交付金 支援創設 産業・観光 振興 首相あす表明」と報じ、「複数の政府関係者が明らかにした」としている。権力側から情報を入手するのが得意なのだろう。もしくは太いパイプを持っているというべきか。
誤報は記者の思い込みが原因と
念のために書いておくと我々読者は簡単に「情報をリーク」と言ってしまうが、権力側が率先して記者にリークすることは少ないのではないか。それよりは記者が対象人物に食らいつき、質問をぶつける、ヒントをもらう、などを経て「成果」があるのだろう。今回の読売誤報は後者の可能性が高いのではないか。検察や関係者からヒントや情報らしきものは得たが肝心の自分の答え(=維新の議員)が間違っていた、という。
ただ、それでも疑問は残る。新聞記事は1人で書いて発行するものではないからだ。ましてや1面トップ記事だ。複数の記者による取材やチェック、上司の判断があっての「スクープ」だろう。誰もが気軽に情報発信できる今だからこそ、何重ものチェックをして情報を世に出すことに新聞の信頼が担保されているはずだった。
すると読売は8月30日に経緯を検証する記事を1面と特別面に掲載した。誤報は記者の思い込みが原因としていた(1面)。
以下、特別面の検証をまとめると、取材のきっかけは社会部の記者が今年8月中旬、政界の事情に詳しい関係者から「東京地検特捜部が政界捜査に動いている」との話を聞いたことだった。別の関係者からも、日本維新の会の国会議員が秘書給与詐欺の疑いで捜査対象となっているとの情報を得て、過去の疑惑がヒントだとの示唆を受けたという。
そのうえで記者はどうしたのか? 記者が日本維新の会で過去に問題が報じられた人物を調べると、2023年に池下議員の公設秘書が市議と兼任していることを問題視した記事を見つけた。なので池下議員の可能性が高いと考えた。記者はその後、複数回にわたり、同じ関係者に対し、池下議員が捜査対象者かどうか確認を試みたという。