1ページ目から読む
2/3ページ目

結婚して気づいた「プロの主婦」の凄さ

──意中の男性をふり向かせる時に「料理で胃袋をつかめ」とよく言いますが、お義母さんに胃袋をつかまれた?

ツレヅレ 言われてみれば、そうかも(笑)。初めての彼の実家では、朝昼晩お義母さんのお料理を食べられて最高でした。「せっかく来てくれたので外食しよう」と言われても、「いえ、お義母さんのご飯がいいです」と断って、毎日手料理をいただきました。

 私自身は「女もバリバリ働くのがよい」という教育を受けて育ったので、専業主婦のことをどこかなめていた部分があったと思うのですが、お義母さんにお会いして、考えが一気に変わりました。家はピカピカだし、ご飯はめちゃめちゃおいしいし、プロの主婦というのはこんなにすごいものかと感動しました。よく、夫の実家に帰省するのが憂鬱だという話を聞きますが、私にとってはお義母さんに会える帰省は無上の喜びでした。

ADVERTISEMENT

 

──そんなにお義母さんのお料理がおいしいと、ご主人に食事を作るハードルが高くなかったですか。

ツレヅレ それが、すごい褒めてくれる人だったんです。最初はあんなに感じ悪かったのに(笑)。私と同じで食べることが大好きな人で、何を作っても「こんなにおいしいものは初めて食べた」と大絶賛してくれました。友人を呼んでわいわい賑やかに飲むのも好きだったので、宴会メニューのレパートリーも増えました。タコ刺しとホッピーとドラムと、なにより私のことが大好きな人で、「ハナちゃん、愛してるよー」が口ぐせでした。

仕事最優先だった夫が受けた「半年の余命宣告」

──でもご結婚後は、一緒にご飯を食べる時間が取れなかったんですよね。

ツレヅレ 結婚後、急に彼の仕事が忙しくなって、なかなか一緒にご飯を食べることができなくなってしまったんです。私の料理を食べてもらいたいのと、食べることがきっかけでつき合いだしたので、何かしら食事を共にしたいという思いもあって、彼にせっせとお弁当を作っていました。外食も一緒に行けないので、私が友人と行って「今日ここに行ったよ」と報告するのを、「ハナちゃんが楽しくてよかったね」と聞いてくれましたね。

 

──そんなすれ違いの生活が続くなかで、ご主人にがんが見つかった。その時の状況を教えてください。

ツレヅレ 仕事最優先で、毎日深夜帰宅していた人が「今日、病院行くから仕事休む」と家にいた日があったんです。珍しいな、よほど具合悪いのかなと思って聞いたら「胃が痛くてご飯がほとんど食べられない」と。「胃潰瘍かなあ」と話していたら、仕事中に彼から「検査の結果が出た。胃がんだって」と電話がかかってきました。

 私は当時、健康系の本の仕事をしていて、がんの知識が中途半端にあったので、とっさに「胃は治りやすいから、切れば大丈夫だよ」と言ってしまったんですけど、自宅に帰ってよく話を聞いたら、胃がんのなかでも特殊なスキルス胃がんだと分かったんです。まさかね、元気そうだし、と翌日病院に行ったら、やはりかなり厳しい状況で、「半年がんばりましょう」と言われました。つまり、余命半年、ってことです。