ツイッターやインスタを中心に、おいしい料理やおつまみに関する記事をアップしている、編集者のツレヅレハナコさん。「基本的に食のことしか考えていない」と自ら語るツレヅレさんと、同じくらい食いしん坊だったご主人を、5年前スキルス胃がんで亡くしました。5年経って、ようやくふり返れるようになったというツレヅレさんに、がんと料理とご主人との思い出について、聞きました。
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出会った日、夫になる人から「結婚したい!」と言われた
──ツレヅレさんはもともと料理が好きだったのですか?
ツレヅレ 料理というより、昔から食べることが大好きなんです。寝ても覚めても酒と食べもののことばかり考えていて、いろいろなお店の料理を食べ歩いては備忘録のつもりでブログに書いていました。そのブログのアクセス数が増え始めた頃、渋谷の居酒屋で夫になる人に会ったんですが、出会ったその日に「ハナコさんと結婚したい!」と言われ驚きました。
──情熱的ですね。ひと目ぼれだったのですか?
ツレヅレ 私の第一印象は最悪でした。最初に会った居酒屋のメニューやお店の設えが私好みだったので、彼に「いい店ですね」と話しかけたんですけど、すごくそっけない対応をされて「感じ悪い人だな」と思いました。挙げ句に、「俺は食べ物に詳しい」とやたら飲食店の情報自慢をしてくるので、こっちも負けてなるかと言い合いみたいになったんです。そうしたら彼が突然「俺、この人とつきあうわ」と勝手に言い出したので、ますます非常識な人、という印象を持ちました。
──それでもまた会ったのはなぜですか。
ツレヅレ ずっと行きたいと思っていた、予約の取れない人気ビストロを彼が予約してくれたんです。迷ったものの食い意地が勝ってつい出かけたら、「で、俺たちいつからつき合う? 結婚しよう」と言ってきて。当時私は彼氏がいたので「彼氏がいるのでムリです」とお断りしたら、「そうなの? じゃあ早く別れてきなよ」と言われ「はぁ?」ですよ。なのになぜか半年後に結婚していました。彼の作戦勝ちです。
──「作戦勝ち」というのは、それも食べ物絡みですか?
ツレヅレ 彼のお母さんがすごくお料理上手だったんですよ(笑)。私、あまり梅干しが好きじゃなかったんですけど、彼の家に遊びに行った時に食べた、お義母さんの手作り梅干しがあまりにもおいしくて。絶賛したら、毎週のようにクール宅急便でお義母さんのお料理が送られてくるようになったんです。
毎週食べているうちに、宅急便で送られて来るお料理ではもの足りなくなって、「目の前で作られたお料理を食べてみたい」と言ったら「じゃあ行こう」と彼の秋田の実家に行くことになって。結果的にそれが結婚のご挨拶みたいになりました。だから結婚したのは、お義母さんのせい、というか、おかげです。