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お花見に行ったり、大好物の牡蠣飯を食べたりできた

──お花見に行ったり、牡蠣ご飯を食べたりもできたんですよね。

ツレヅレ 亡くなったのが4月4日で、少し早めに桜が咲いたので、お花見に行くことができました。病院だと外出許可など大げさになるし、彼にとっては「家からお花見に行く」というあたりまえのことが嬉しかったようで、「普通の人みたいだよね」と笑っていました。最期につくった料理は土鍋で炊いた牡蠣飯でした。彼の大好物で、胃ろうで飲み込めないから、咀嚼したらティッシュで外に出すんですけど、おいしいおいしいって食べてくれました。そんなことも、自宅だからできたことです。

 

──思い出をこうして話せるようになるまで、つらいこともたくさんありましたよね。

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ツレヅレ 1年半闘病していたので、ある程度覚悟はしていましたが、気持ちの整理がついたのは、ブログを書いたからですね。人に見せるかどうかは別として、文章に書き起こすことで心の整理ができる人がいて、私はまさにそのタイプなんです。

 市川海老蔵さんが小林麻央さんを亡くされた直後、インスタを頻繁にアップしていると批判めいたことを言われた時期がありましたが、彼も私と同じように、書くことで気持ちが楽になるタイプの人なんじゃないかと思います。悲しんでいないわけではなく、書かないと悲しみに潰されそうになるから、書いて外に出すしかないんです。書くことで腑に落ちるものがあるというか。だから個人的には「放っておいてあげればいいのに」と思いながら見ていました。

 

──自宅看護についてのブログは、同じ状況で悩む方への励ましにもなったのでは。

ツレヅレ 自宅看護のことについてブログを書いたのは、私自身、情報がなくて困っていたからです。誰かの助けになればいいなという思いと、忘れないうちに書き残しておきたいという思いで文章に残しました。実際に、ご主人が同じスキルスがんで自宅看護にするか悩んでいるという同世代の方からコメントをいただいたりして、誰かの役に立てたんだと思いました。

お金がないとメンタル的にもっとつらかったと思う

──保険に入っていたことを、よかったことのひとつに挙げておられます。

ツレヅレ 結婚する時に、なぜか私の母から強く保険に入ることをすすめられたんです。二人とも保険なんて、と思っていたのに、あまりにも強くすすめられて仕方なく入ったんですが、これが本当に助かりました。がん治療って実際にどんどんお金が出ていくんですよ。それに、がんにいいと聞くと、つい高価な健康食品とかサプリとかも買いたくなってしまうので、お金がないとメンタル的にもっとつらかったと思います。

 財テクを推奨している方が、自著で「保険はムダ、とカットしたら自分ががんになって家族に迷惑をかけた」と書いているのを読んで、ショックを受けました。人生には何が起こるかわからないので、がん保険は特に入ったほうがいいと思います。今ではすすめてくれた母に感謝しています。

 

──いろいろな方が、いろいろな形でツレヅレさんを支えてくれてありがたいですね。

ツレヅレ はい。同じようにがんで奥様を亡くした友人の「亡くなったら全部おしまいとは思っていない。意味がなかったとは思わないし、身体はなくなったけど、今も一緒に生きてると思っている」という言葉にも救われました。

 がんでご家族や親しい方を亡くして立ち直れない人もいると思いますが、私の場合は、彼がとにかく私が楽しそうにしていることが好きだったので、この先も私が楽しく生きていくことが彼の望みなのではないかと。だからこれからも、元気で楽しく生きていこうと思っています。

写真=末永裕樹/文藝春秋