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それでも、私が末期がんの夫を自宅で看取る道を選んだ理由

ツレヅレハナコさんインタビュー #2

2018/07/31
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自宅介護経験のある上司は「相手のことを憎く思うこともある」

──具体的には、自宅ではどんなことをするのですか?

ツレヅレ あらゆることです。点滴や服薬など基本的な朝・昼・晩の医療処置から始まり、胃ろうパッドの交換、看護師さんやお医者さんへの対応もですし、ほぼ毎日人が訪ねてくるので掃除もしなきゃとか、彼との限られた時間を少しでも埋めるべく話し相手になったりお世話をしたり。それに、自宅で少し仕事もしていたので、疲れからイライラしたりしていました。今考えるとしなきゃよかったのに(笑)。

──自宅看護を反対した方もいたのでは?

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ツレヅレ 自宅で介護経験のある上司からは「相手のことを憎く思うこともあり得るし、最期までよい関係でいるためには、できればやめたほうがいい」とアドバイスをもらいました。実際、メンタル的におかしくなって、トイレのドアを閉めたか閉めないかというどうでもいいことで大喧嘩したこともありました。

 

──それでも、自宅看護をしてよかったと思いますか。

ツレヅレ もちろんです。夫は友人に恵まれていたので、とにかくたくさんの人が家にきてくれたんです。病院に来ると「お見舞い」になってしまうけれど、自宅に来てもらえば、「遊びに来た」ことになります。ベッドで寝ている彼の横で、みんなで宴会をしたりして、元気だった時の楽しさを最期まで共有できたのは、彼にとってもよかったと思います。

 あと、家で猫を飼っているんですけど、自宅だと猫と一緒に眠れるんですよ。最期まで私と猫と一緒に過ごせた時間は、どんなに至らないことが多かったとしても、彼にとってはよかったのではないかと思います。我が家の場合はいろいろな環境に恵まれていて期間も短かったので、誰もが絶対に自宅看護をするべきだなんて言えませんが、それでも私たちの場合に限って言わせてもらえば、本当に自宅看護を選択してよかったと思います。