一般的なプラモデルとは異なる視点で試作を重ね、最も苦労したのは……

 こうしてウンコスルデイズの企画が立ち上がった。同シリーズでは、クレイモデルキットという同社初の規格を用いているが、キャラクターのボディとなるうんこ本体を柔らかい素材で作り、手足などのプラパーツを挿してキャラクターが完成する——という仕様は初期から固まっていたという。

「うんこの材料は、スライムやスポンジ、スーパーボールや練り消しの素材など、いろいろ試しました。最終的に軽量紙粘土を採用したのは、誰でも簡単にキレイなうんこを作ることを最優先に考えた結果です」

 子ども向け商品では、より手頃な販売価格を実現する必要がある。低コストかつ安定供給でき、安全基準も満たす素材としても紙粘土が最適だと考えた。

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 素材が決まった後は、試作だ。肝となるウンコ型は、金型を2回。さらに実際に商品で使う型に関しては、細かい改良も含めると10回以上行った。

 最近では技術も向上し、図面ソフト上の検証→3Dプリンターの出力品で確認できることも多いという。また、金型は一度作るだけでも「まあまあなお金がかかる」(安部氏)ため、試験的に製作することは稀だと安部氏は話す。

 それにしても、変形機構を有するものもあり、複雑に思えるガンプラと比べてシンプルに映るウンコスルデイズで、なぜこんなにも試作を重ねたのだろうか。

「技術や検証の蓄積があるガンプラに比べて、粘土という我々にとって未知の素材を扱うという点が大きかったです。型からうんこ(粘土)が剥がれやすいか、うんこ本体の手触りが滑らかか。また、すぐに壊れず何回も遊べるかなどを細かく検証するためには、どうしても金型も含めて試作を作り込む必要がありました。その結果、一般的なプラモデルと比較して試作回数がかなり多くなったんです」

 一般的なプラモデルとは異なる視点の試行錯誤を重ねて、うんこをブラッシュアップしていった 画像提供:BANDAI SPIRITS

うんこには「設定もクソもない」

 試行錯誤を踏まえて生まれたプロトタイプの商品を基に、今度は市場調査として2024年夏の「東京おもちゃショー」で体験会を実施。そこでのフィードバックを反映して、現行版が完成した。特に、子どもが手に持った時の「ちょうど良いサイズ感」については入念な検証を重ねた。

「子どもが手にして喜ぶサイズは、ギミックやデザイン、構造などによっても違います。例えば、小さい方が可愛いし、手で持ちやすい。でも満足感やインパクトがなくなってはつまらないなとか、いろいろ考えました。

 そもそも元となる作品がある場合には、機体のサイズ設定があるので、それを各商品の縮尺に合わせることで大体の商品サイズが決まるのですが……うんこに設定もクソもないじゃないですか(笑)。最終的に、うんこのベストサイズは企画提案者である私が直感で決めて提示し、社内外を説得するしかないと考え、ひたすら作り込みました。ここには本当に苦労しましたね」