また、いざというときに誰に相談すればよいのか、どこに助けを求めればよいのか、どのような本や情報が参考になるのかといった当事者たちが求める情報は、あまりにも不足しているのが現状です。
ここからは、実際に私が関わってきた加害者とその家族についてのエピソードをご紹介します。当事者のプライバシー保護のため、個人が特定できる情報は変更しています。なお具体的な性加害の描写も出てきますので、ご注意ください。
ケース①息子が女子生徒の着替えを盗撮
体育の授業中、16歳の男子高校生Aがスマホで女子生徒の着替えの様子を盗撮し、それを仲のいい同級生とのLINEグループで共有するという事件が起きた。
両親が問いただすと、Aは当初「みんなでふざけ合っていただけ」と事の重大さを理解していなかった。日頃から真面目で成績も優秀、サッカー部では主力選手として活躍する模範的な生徒だった彼が、なぜこのような加害行為に及んだのか、両親も理解できずにいた。
事態が発覚したのは、被害に遭った女子生徒のひとりが心身の不調を訴え、保健室に駆け込んだことがきっかけだった。学校が調査を始めたときには、すでに画像は学年全体に拡散され、被害女子生徒は精神的なショックから登校できない状態に追い込まれていた。
AがLINEグループに投稿した画像は、さらにSNSを通じて拡散。ネット上の「まとめサイト」にも転載されるようになった。
逮捕された息子、複数の損害賠償請求
学校からの一報を受けたAの両親は、まるで悪夢を見ているかのような思いだった。
「うちの子に限って……嘘であってほしい」という思いは、警察からの呼び出しで打ち砕かれた。
被害生徒の保護者が被害届を出したことにより、Aは逮捕された。その後の捜査で、Aは過去半年にわたり、同様の盗撮行為を繰り返していたことが判明。複数の被害者の画像がインターネット上で拡散され、被害は予想を超える規模に膨れ上がっていた。