しかし、その行為が他者の人権を著しく侵害する可能性があるという認識がまだまだ追いついていないのも現実です。

また、とくに男子生徒の場合、女性をまるでモノのように扱うことで、ホモソーシャル(男性優位を前提とした男性同士の結びつき)な仲間内の絆を深めていくなど、「有害な男らしさ」に過剰適応した結果として性加害行為に至ることもあります。

子育てをするなかでは、親が予想すらしない出来事が往々にして起こるものです。しかし、未成年の子どもが性問題行動を起こした……と知った親の精神的なダメージは計り知れません。

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「自分の育て方が悪かったのではないか」と自責の念に駆られたり、実名報道こそされないものの地域や学校で噂されたり、コミュニティから排除されてしまうことも少なくありません。また、きょうだいがいる場合には、その影響も深刻です。さらに被害者への高額な被害弁済に加え、休職や退職、転居費用など、家族の経済的基盤そのものが大きく揺らぐことになります。

ケース②小6娘が妊娠、相手は中2兄だった

「お母さん。今月、生理が来ないんだけど……」

夫と離婚し、ひとり親として子育てをしているB子はある日、小学6年生の娘からそう打ち明けられた。慌てて産婦人科に連れて行くと、なんと娘は妊娠8週目だった。聞くと、自分が仕事で家を空けている間、中学2年生の兄としばしば性行為を繰り返していたというのだ。

B子は葛藤しながらも、児童相談所に通報することを決めた。その結果、息子は一時保護ののち、鑑別所に送致され、家庭裁判所による審判で少年院での処遇が決定された。娘はB子との生活を続けることになったものの、母としてふたりの子どもの将来に深い苦悩を抱えている。

きょうだい間での性加害は決して少なくない

家庭内での性暴力で特徴的なのは、「加害者と被害者が同じ家族の中に存在する」という現実です。このケースのように兄が妹に性加害を行った場合、その親であるB子さんは加害者家族であると同時に、被害者家族にもなります。