「きょうだいで性行為なんてありえない!」と驚いた方もいるでしょう。たしかにそれも無理のない話かもしれません。

というのも、家庭内での性暴力は、なかなかその実態が明らかになりません。こども家庭庁のデータでは、2023年度の児童虐待の相談件数のうち、性的虐待は2473件でしたが、そこにはきょうだいや祖父、おじなどからの性暴力は含まれません。児童虐待防止法で、「児童虐待」が子どもを監護する保護者によるものと定義されているからです。

性的虐待の実態を調査した神奈川県中央児童相談所のデータによれば、きょうだい間の性暴力は全体の17%でした。加害者でもっとも多いのは実父(36%)そして養父・継父・内夫(23%)で、実兄(12%)、祖父(6%)と続きます。

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このケースの場合、息子による加害行為は暴力的なものではなかったとされ、娘にも性的な好奇心があったことが後日、明らかになりました。娘は現在も兄との同居を強く望んでいると話していることから、B子さんは子どもたちの心情を理解し、今後どのように家庭内で性教育を行っていくのか、児童相談所と相談しながら前に進んでいくといいます。

斉藤 章佳(さいとう・あきよし)
精神保健福祉士・社会福祉士
西川口榎本クリニック副院長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模と言われる依存症回復施設の榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、長年にわたってアルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などさまざまな依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で現在まで3000名以上の性犯罪者の治療に関わり、性犯罪加害者の家族支援も含めた包括的な地域トリートメントに関する実践・研究・啓発活動に取り組んでいる。主な著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』(ともにイースト・プレス)、『「小児性愛」という病 それは、愛ではない』(ブックマン社)、『しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには』(集英社)、『セックス依存症』、『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(ともに幻冬舎新書)、『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)、監修に漫画『セックス依存症になりました。』(津島隆太・作、集英社)がある。
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