国道といえば、交通量が多く整備が行き届いた立派な道路をイメージする人が多いだろう。
しかし、そのイメージとは裏腹に、道幅が狭く、舗装は剥がれ、路面には無数の落石が転がっているような国道も存在している。そんな酷い状態の国道に魅力を感じる愛好家もおり、親しみを込めて“酷道”と呼ばれている。
そうした酷道の中でもトップクラスに分類されているのが、国道157号だ。
インパクト抜群の看板
石川県金沢市を起点に岐阜県岐阜市までを結んでおり、そのうち福井~岐阜県境にある温見峠の区間は狭隘路が続く。ガードレールが設置されていない区間も多く、対向車が現れると谷底へ転落してしまう恐怖を感じながら、ひたすらバックするしかない。
そんな国道157号を象徴していたのが、温見峠よりも岐阜県側に設置されていた“危険 落ちたら死ぬ!!”という看板だ。
設置されていた付近は谷が深くなっており、国道との高低差は100メートルを超えている。実際に転落死亡事故も度々発生しており、ドライバーへの注意喚起のため、1980年前後に設置された。
黄色い背景に赤文字で書かれた“落ちたら死ぬ!!”はインパクト絶大で、注意喚起として機能するのはもちろん、通行する多くの人に恐怖と絶望を与えていた。何を隠そう、私も絶望感を与えられた一人だ。
実は私が免許を取得して初ドライブに選んだのが、この国道157号だった。いきなり暗闇の中に現れた“落ちたら死ぬ!!”を見て、落ちていないのに死にそうな気持ちになった。
あれは今から25年前の夜のこと。岐阜市街地を出発した私は、福井県を目指していた。カーナビもインターネットもそう普及していなかった時代なので、紙の道路地図だけが頼りだった。初心者で初ドライブ、車線変更が苦手なので交通量が多そうな道を避け、かといって狭い道も嫌なので、国道だったら間違いないだろう。そう思って選んだのが、国道157号だった。
市街地を離れてもしばらくは2車線の快走路が続いていたが、山が近づいてくると状況が一変する。民家の軒先ギリギリを走る狭い道になってしまった。
焦りながらも、集落さえ抜ければまた2車線の広い道に戻ったので進んでいたが、そんな時に現れたのが、あの“落ちたら死ぬ!!”だった。



