「おまえが望むなら、クロムバッハを誘拐してフランスに送り届けてやろう」
2009年、プロの誘拐チームに1万9千ユーロ(約250万円)の報酬で、娘を殺害した継父の誘拐を依頼した父親。復讐のため、犯罪にまで手を染めてしまった彼のその後とは……? 我が子を無惨に殺された親、学生時代ひどいイジメに遭った者などが仕返しを果たした国内外の事件を取り上げた新刊『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)から一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/最初から読む)
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「あとはおまえの好きにすればいい」
2009年10月8日、誘拐チームの3人はドイツ・バイエルン州シャイデックでクロムバッハを拉致。誘拐した車はドイツ警察に追われながらも、追跡を避けながらスイス、オーストリアの国境を越え、9日後の17日、フランスとの国境近くの裁判所でクロムバッハを置き去りにする。このとき、彼は柵に鎖でつながれ、頭蓋骨を骨折していた。
「あとはおまえの好きにすればいい」
誘拐犯の電話を受け、バンベルスキーは警察に自首。
犯行に至った経緯を洗いざらい打ち明ける。ドイツ当局はクロムバッハの帰国とバンベルスキー及び誘拐犯の引き渡しを要求したが、フランス側はこれを拒否。クロムバッハはフランスで投獄され、2011年より裁判が始まった。公判では数人の女性が10代のころ、クロムバッハにコバルト・フェレシットの注射を使って性的虐待を受けたと供述し、カリンカの実母であるダニエルも証言台に立った。
同年10月22日、裁判所はカリンカに対して故意に身体的危害を加え、不慮の死を招いた罪でクロムバッハに懲役15年の刑を宣告する。クロムバッハはすぐに控訴するも棄却。
最高裁判所への上訴も2014年4月2日に退けられ刑が確定、刑務所に投獄されるも、6年後の2020年2月、健康上の理由で釈放され、同年9月12日にドイツの老人ホームで亡くなった(享年85)。
