長期航海は中国へのメッセージ?
本作戦には英国陸海空軍、海兵隊将兵約4000人が参加し、40カ国以上を訪問しながらの多国間訓練を通じて、インド太平洋地域に大英帝国のプレゼンスを示さんと、まあ壮大なものである。
しかし、本作戦の目的は不肖・宮嶋から言わせれば、今年中にも3隻目の空母を就役させるとみられる中国に対して「太平洋を制するのは、かつて7つの海を制し日沈まぬ海洋国家、大英帝国や。そして、これこそがホンマの空母打撃群や」と、知らしめることに違いない。その勇姿や友好国との連携を深めた多国間訓練を見せつけることで、台湾や我が国、南西諸島への侵略の意図を挫くことにあるのだろう。
プリンス・オブ・ウェールズの艦載戦闘機F-35Bの部隊は、英空軍と英海軍の2個飛行隊である。トム・クルーズ主演で世界中で大ヒットしたハリウッド映画「トップ・ガン」をご覧になった方はご存じだろうが、米海軍の空母艦載機は基本すべて海軍機であり、パイロットも海軍軍人である。
これは海軍だけで充分な予算と人材を確保できる世界一の軍事大国、アメリカぐらいにしかできないことである。なお組織上は米海軍隷下である米海兵隊もF/A-18戦闘機を運用しており、F-35Bも基本軽空母といえる強襲揚陸艦に搭載される。
スキージャンプ台のような艦首の飛行甲板
また、艦首の飛行甲板がスキージャンプ台のように跳ね上がっているのも特徴のひとつである。
これは艦載戦闘機のF-35BがSTOVL機のため、最も燃料を消費する短距離発艦時の燃費と浮力を少しでも稼ぐためである。
その飛行甲板だが、なぜ米空母や仏の空母「シャルル・ド・ゴール」のように発艦時の燃費や搭載武器重量を問わないカタパルト(発出機)式にしなかったのかというと、当初は米原子力空母の蒸気カタパルトではなく電磁カタパルトとアレスティング・ワイヤー(固定翼機着艦時にフックをひっかけるワイヤー)を搭載予定だったが、予算の関係でSTOVL機であるF-35Bになったからだという。
やはりカタパルトよる発艦とアレスティング・ワイヤーと着艦フックによる着艦は運用が難しい……こともあるが、英国海軍は先代の空母「インビンシブル」型の時代から垂直発着艦できる固定翼戦闘機「ハリヤー」を運用し、フォークランド紛争で戦果も上げてきた自信があるのではないか、と不肖・宮嶋は推察する。
だが……やはり予算なのだろう。空母を運用するにはそれほどゼニがかかるのである。


