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ケガや病気にたびたび遭遇するが…
突発性難聴、声帯ポリープ、心臓カーテル手術、外傷性白内障手術など、ケガや病気に遭いながらも、強靭な精神力で“乗り越える”。むしろそれらを自分への制限を外すトリガーにし、年々エネルギッシュでのびやかになっている気さえする。デビュー当時、嫌で断っていたという芝居も、今では彼という人間を示す重要なファクターだ。特に「下町ロケット」の財前部長には、無限大の可能性を感じた。
年齢を重ねてからしか出せない、説得力と色気があるのだ、と。
「若さは愚かさである」と言う吉川。愚かさという言葉の中には、きっと、不器用にぶつかり、闘い、疾走したあの80年代への愛おしさも含まれているのだろう。
まるで刀を研ぐように、年とともに経験と情熱を重ね、自らの心身を鍛錬していく。
【参考文献】
軍司貞則『ナベプロ帝国の興亡』(1995年、文春文庫)
島﨑今日子『ジュリーがいた 沢田研二、56年の光芒』(2023年、文藝春秋)