効果的だった大屋根リングの存在
通期パスの価格は1枚3万円。つまり4回以上入場すれば元がとれる算段だ。地元の方にとっては、一日では見切れないパビリオンを何度も通って見るにはちょうどよいチケットだったようだ。実際、通期パスの売れ行きは良く、累計販売枚数は9月5日時点で40万4000枚に達している。
彼らは、数十分から数時間も待つことへの対応策として、日傘はもちろん、水分補給、携帯椅子など万全の準備態勢。待つ間に女性たちは井戸端会議をしながら、会場での滞在自体を楽しんでいるように見えた。
全周約2キロ、最高部が地上20m、世界最大の木造建築物として話題となった大屋根リング。建設費用が350億円もかかることが判明し、閉幕後の取り壊し、再活用を巡って大議論となったが、リングは万博会場の中でも際立つ存在だったといえる。夏の大阪の暑さは尋常ではないが、リング下は大阪湾からの海風が抜け、日陰ともなることから、多くの入場者がリングの下を休憩所にすることができる。
またリングの上に登れば、夕方に大阪湾に沈む夕陽はここが大阪の人工島ではなくどこかのリゾート地にいるような不思議な高揚感をもたらしてくれた。
メディアを賑わせたいくつかのトラブル
ただいっぽうで、開幕以来いくつかのトラブルがメディアを賑わせたのも確かだ。開幕直後は会場内で一度にたくさんの人が携帯電話を利用することから通信障害が発生。通信各社が対応に追われ、移動型基地局を設置することとなったが当初の想定に問題があったとの指摘が相次いだ。
おそらく全くの想定外であったのが5月に大量発生したシオユスリカだ。人間の血は吸わない虫であるが、特に水面に近いリングの柱部分に大量にへばりつく姿が拡散されるとネット民を中心にドン引き状態をもたらした。
また8月13日には、大阪市内と夢洲をつなぐ唯一の地下鉄、大阪メトロ中央線の電気系統トラブルが帰宅する3万人の足を直撃。1万1000人が現地で夜明かしをする事態となった。このほかにも噴水ショーなどを行う会場内のウォータープラザでレジオネラ菌が検出される、一部のパビリオン建設にあたって工事代金の支払いが行われていないといった指摘が相次いだ。