「トヨタ自動車専用」に「ゴミを運ぶ」貨物列車も
「化学薬品」は約109万トン、これはプロダクトの製造段階や実験、研究で使われる材料だ。苛性ソーダ、濃硝酸、アンモニア水、珪酸ソーダ、塩酸、酢酸エチルなど、トラックで輸送する場合は「危」マークを掲げる品目といえる。従来は専用のタンク貨車を使って輸送していたけれども、コンテナ輸送に対応するため、コンテナサイズのフレームにタンクを据えた特殊なコンテナに移行しつつある。
さらに「自動車部品」が約73万トン。この項目で特筆すべきはトヨタ自動車の貸切便「TOYOTA LONGPASS EXPRESS」だ。愛知県周辺で生産された自動車部品を、岩手県の自動車組み立て工場へ輸送する列車である。貨物列車で運んだ部品は主に小型ハイブリッド車の生産に充てられる。そのほか、工業品では「家電・情報機器」も約37万トンある。小口の製品輸送にとって5トン積み12フィートコンテナは都合がいい。
貨物列車は廃棄物、言葉を選ばずいえばゴミも運んでいる。約53万トンの「エコ関連物資」が該当する。興味深い事例として、川崎市の家庭ゴミ輸送を紹介しよう。
川崎市は細長い地形で、北西の内陸部と南東の臨海部まで30キロ以上もある。内陸部が東京郊外の住宅地として発展し、従来のゴミ処理施設では足りなくなった川崎市では、大型ゴミ処理施設を作るよりも、市の中央部にある梶ヶ谷貨物ターミナル駅までゴミを運び、貨物列車で臨海部の浮島処理センターへ輸送することにしたわけだ。
川崎市は臭気対策などを施した特殊なコンテナを開発した。このノウハウを生かして、大規模被災地のガレキ輸送や、リニア中央新幹線のトンネル残土輸送なども行っている。製品を運ぶ「動脈輸送」に対して、廃物を運ぶものは「静脈輸送」と呼ばれている。
ちなみに鉄道貨物コンテナの中には冷蔵タイプ、冷凍タイプもあり、生鮮野菜や鮮魚、精肉、冷凍食品、医薬品などの輸送も可能だ。冷蔵コンテナは断熱材を使用し保冷機能を高めており、冷凍コンテナはディーゼル発電機を使った冷凍機が付属。マイナス25度で輸送できる。結論として、貨物列車はトラックで運べるものはほとんど運べる。
このように非常にさまざまなものを運ぶ貨物列車だが、都心ではなかなか見かけない。一体それはなぜなのか。後編では、貨物列車の歴史を見ていく。
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