都心部ではなかなか見かけない「貨物列車」。中には「トヨタ専用」の貨物列車や、ゴミを運ぶもの、さらにじゃがいもやたまねぎを運ぶ期間限定の列車まで――知られざる貨物列車の世界を、鉄道に詳しい「書き鉄」の杉山淳一さんが解説する。(全2回の1回目/続きを読む)
◆◆◆
JR貨物は9月12日から10月9日までのうち27日間に「馬鈴薯輸送専用列車」を運転する。北海道のじゃがいもの収穫期であり、全国的に新じゃがが出回るタイミングだ。涼しくなって、カレーやシチュー、おでんが恋しくなる時期でもある。特に新じゃがは皮付きのまま煮物で食べられると人気であり、需要が高まるタイミングで臨時の貨物列車を走らせる。鉄道業界の風物詩の一つといえる。
夏から春には「たまねぎ列車」も
馬鈴薯輸送専用列車は、北海道十勝地方の中心地、帯広貨物駅から埼玉県の熊谷貨物ターミナル駅まで設定される。1つの列車につき、コンテナ専用貨車を20両連結し、5トン積み12フィートコンテナを100個搭載する。これは20トントレーラーで25台分だ。
専用列車を運転する期間に輸送するコンテナ総数は2700個を予定しており、最大輸送量は1万3500トンだ。ちなみにじゃがいもは冷蔵保存されて通年で出荷されるため、定期貨物列車にも通年で積載されている。
毎年8月から翌年4月までは「たまねぎ列車」も活躍している。こちらは北海道北見地方で生産されるたまねぎを満載し、北見駅から北旭川駅まで運行する。ここからさらに、札幌を経由して首都圏はじめ全国に運ばれていく。
じゃがいもや玉ねぎ以外の野菜もそうだし、貨物列車はたくさんの品目を運んでいる。例えば米に砂糖、でんぷんなどだ。
日本甜菜製糖によると、北海道はてん菜を栽培し砂糖を作るのに適しており、てん菜糖は日本の砂糖消費量の20%以上をまかなっているという。これらはほとんど貨物列車で輸送されている。砂糖を使った製菓メーカーや飲料メーカーは内陸部に多く、海上輸送よりも鉄道のほうが目的地まで安価に、安全に輸送できるそうだ。
野菜類も同様で、各地の青果市場は鉄道駅に近いため、鉄道貨物輸送のほうがふさわしいという。これは各地に市場が作られた時代に鉄道輸送が中心だったからだ。トラック輸送は長距離になるほどコストが増える。船舶輸送では港でトラックに積み替えて長距離を走らせる必要がある。



