乳幼児を激しく揺さぶって脳にダメージを与える「揺さぶられっ子症候群(SBS)」。2010年代半ばから、親や親族がこの虐待を行ったとして逮捕される事件が相次いだ。しかしその多くはえん罪だった――。なぜえん罪は起こったのか? マスメディアの責任は? 事件を追い続けてきたテレビ記者による渾身のドキュメンタリーだ。
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「こいつがやったに違いないって報道してますよね」
「上田さん、思いませんか? こいつがやったに違いないって報道してますよね」
無実を訴える男性のインタビュー映像を見つめ考え込む、関西テレビ(カンテレ)の上田大輔記者。本作の監督だ。そこにタイトル『揺さぶられる正義』が浮かび上がる。えん罪被害者はマスコミ不信を募らせている。逮捕時に容疑者として大きく報じられるのに、裁判で無罪になっても犯罪者扱いのイメージはぬぐえない。ニュースの“正義”が揺らぐ中、「報道のあり方を変えたい」という上田さんの決意が全編を貫いている。
隠れた主役は幼い子どもたち。事故や病気などで脳にダメージを受け、亡くなった子もいる。それが子どもを激しく揺さぶった「揺さぶられっ子症候群(Shaken Baby Syndrome=SBS)」だとされ、親や近しい人が罪に問われる事件が相次いだ。これに上田さんは疑問を抱く。
「そこまで激しい揺さぶりをする親が、そんなにいるだろうか?」
ここで、上田さんが家で子どもとたわむれる映像が流れる。肩車であやし、ふざけて子どもの足を嗅いで、笑い声をあげる。本筋と無関係のようだが、親としての率直な違和感が取材の原点にあることを示す。同時に、記者として他人の自宅に上がり込み取材をする立場で、自らの私生活も表に出そうという覚悟が感じられる。

