6話目「恐怖症店」(梨・著)
ラストは梨さんの「恐怖症店」。幻想的で、ダークな童話の趣もある粋な小品でした。小学生の自分が、学校帰りに怪しいおじさんから「怖い話あるよ」って売りつけられたら嬉しい話みたいな(笑)。わかります? 『りぼん』買うお金なくなったけどいっか、みたいな。今なら事案ですね。昔でもか。
文藝春秋PLUSのYouTubeでもご本人が触れられてましたけど、梨作品には珍しくキャラが立っていて新鮮でした。ふだんは、もっぱら恐怖の触媒として機能する登場人物が多いイメージですから。恐怖は生存に必要ですが、恐怖症は生活の幅を狭めてしまう。そのことを逆手にとった恐怖症店の設定に「なるほど」と唸りました。自分が買い求めるなら何かなあって考え込んだり。続きというか、この世界観のお話、もっと読みたいですね。編集者としても当然狙ってるんでしょ?(笑)
……あ、やっぱり聞こえます? ドア、かりかり引っ掻く音がしてますよね。よかった、わたしだけに聞こえてるわけじゃなかった。それを確かめたくて、オンラインじゃなくご足労いただいたんです。あっ、鳴いた。いま、聞こえましたよね?
猫、飼ってないです。この本読んで、さっき話した恐怖と猫について考えてたら、いつの間にか。
ところで『クラガリ』っていいタイトルですよね。暗闇にはすでに何かがひそんでいるけど、暗がりは何かが這い出てくるところ。黄昏を「逢魔が時」って呼ぶみたいに。
日も短くなってきましたね、もう西日が射してきましたよ。やだなあ、ますます動きにくくなる……最近、暗がりにね、そう、影の中にね、猫が出てくるんです。それこそ建物なんかの大きな影だと、その中に、黄色い目だけが百も二百も見えて、踏み殺しちゃったらどうしよう、って心配で出歩けないんですよ。自分の影はどうしようもないのでやっかいですね。そういえば童謡の「ねこふんじゃった」って怖くないですか? そんなポップに踏むなよって(笑)。あれの歌詞も、実はなかなかホラーなんで調べてみてください。
いえ、今は見えませんけど、寝てるだけかもしれないんで。目玉の数が奇数の時も、大きさがばらばらの時もあります。あー、踏みたくないなあ。
えっ、怖くないですよ。猫はどんな猫だってかわいいんだから嬉しいに決まってるじゃないですか。