2000年に刊行された小池壮彦著『幽霊物件案内』が25年振りに文春文庫から復活刊行された。小池さんと、同書の単行本時の担当編集者であり、今ではホラー&ミステリの屈指の書き手として知られる三津田信三さん、小説だけでなく映像やイベントも積極的に仕掛ける新鋭・梨さんが、現在進行中の空前のホラーブームを語る。(全3回の2回目/最初から読む)
◆◆◆
ネットから生まれた新たなホラーワールド
司会:梨さんは世代的にも、最初からネットの中でホラー的なものと接触を開始されたとお聞きしています。ちょっとそのあたりのホラーとの馴れ染めを教えていただけますか。
梨:先ほど三津田さんからタイムリーという話がありました。『幽霊物件案内』を読ませていただいて本当に面白かったんですけど、それと同時に私もすごくタイムリーだなと思ったことがあって、2000年春に後書きが書かれているんですけれども、私は2000年の4月生まれなんですよ。私が生まれた時に刊行されたのが、この『幽霊物件案内』でした。
小池:それは奇遇ですね。
三津田:『幽霊物件案内』と同い年ですね(笑)。
梨:馴れ初めという話ですと、7歳ぐらいの時からインターネットに触れ始めて、今でいう5チャンネル、当時の2チャンネルで、P2P(ピアツーピア)のウィニーとかでスナッフビデオとかいろんなものを見て育ちました。いわゆる90年代におけるアンダーグラウンドっていう文脈ではなく、2000年代のインターネットサブカルチャー的なところが私の出発点です。
三津田:だけどネット上には90年代以前の遺産もありますよね。梨さんは当時まだ子供だったから吸収が絶対に早い。この前お話ししたときも思ったんですけど、年齢のわりに昔のことをよくご存じだと思います。それってやっぱりネット世代の強みですよね。
梨:逆に私の世代からすると羨ましいのは、それこそ私は思い出話として、昔は誰がやってんのかもわかんないレンタルビデオ屋で、100円ぐらいで裏ビデオ的なものを売ってたんだよ、みたいな話を伝聞で聞かされているので、もうレジェンドなんですよね。
三津田:ワゴンセールで、掘り出し物があるとか(笑)。
梨:そういう肌感みたいなものを知らない、知識としてしか知らないわけで、けっこう隔絶があると感じていました。それこそ『幽霊物件案内』の中で、まだ青島幸男が都知事だった頃の話が出てきますけど、まず青島幸男知事について一度調べるところから始まるみたいな……。
