2000年に刊行された小池壮彦著『幽霊物件案内』が25年振りに文春文庫から復活刊行された。小池さんと、同書の単行本時の担当編集者であり、今ではホラー&ミステリの屈指の書き手として知られる三津田信三さん、小説だけでなく映像やイベントも積極的に仕掛ける新鋭・梨さんが、現在進行中の空前のホラーブームを語る。(全3回の3回目/最初から読む

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消えた教科書の不思議

小池:梨さんはなにかそういう心霊体験的なものはありますか?

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:それがですね、私が知らず知らずのうちに現実の体験だと思ってるけど、じつはっていうのはあるのかもしれないんですけど、自分が自認してる体験っていまのところないんですよ。

小池:三津田さんはどうですか?

三津田信三さん

三津田:別に心霊系ではありませんが、不思議な体験はあって、エッセイにも書きました。小学校3年か4年の授業参観で、僕は一番後ろの席でした。国語の授業で教科書を出して待っていたら、先生が入ってきて「いったん教科書をしまいましょう」と言うので机の下の物入れにしまったんです。それから先生が父兄にむけて少し話をして、「じゃあ授業を始めましょう」となったので、机の中から教科書を出そうとしたらないんです。机の物入れって、ただの箱というか穴でしょ。ほかの教科書やノートも入っているけど、国語の教科書だけ見つからない。念のため鞄の中も捜したけどない。

 それだけだったら僕の勘違いで、国語の教科書を持ってきたつもりが、実は別の教科書だった可能性もある。ところが、後ろに並んでいた友達のお母さんが、僕が国語の教科書をしまうのを見ていたんですね。一緒に捜してくれたけど、やっぱりない。完全に消えたんですよ。これは相当に不思議で、まあ一種の密室ですよね(笑)。

司会:結局、その教科書は出てきたんですか?

三津田:いえ、ついに出てきませんでした。家に帰ってからも捜したけど、もちろんない。本当に四次元です。エッセイにも書きましたけど、これがある日、大人になって、家の机の引き出しから現れたら怖いですよね(笑)。

小池:それなんですよ。みんな勘違いと思ってそのまま忘れちゃったり、気にしなかったりで済ませちゃうけど、本当に変なことが起きてるんじゃないかって考えてみるのも一興ですよ。この世の中って、仕組みそのものがけっこうインチキですから。