小説からイベント、美術展まで広がるホラーワールド
司会:みなさんの今後のお仕事の予定を教えていただけますか。
三津田:9月に連作怪奇短編集『妖怪怪談』が光文社から出ます。雑誌連載中は「妖 怪 談」というタイトルで、文字の間を半角開けることで「妖しい怪談とも読めるし、妖怪の談とも読める」という仕掛けだったのですが、経験上タイトルに半角アキとか入れると、後々ややこしい事態を招きかねないので、あえてベタに『妖怪怪談』としました(笑)。
司会:梨さんはイベントも含め面白そうなご予定がたくさんあるみたいですね。
梨: そうなんです。今年の夏は3つ4つ大きなものがあって。一つは7月18日(金)から渋谷で始まった「恐怖心展」。昨年東京で、その後、名古屋、いままさに大阪でも巡回展をやっている「行方不明展」の後継企画なんですが、およそ50種類のフォビア(恐怖症)を集めて展示してます。
三津田:へえ、恐怖症を展示で見せるんですか。
梨:よく知られているものだと高所恐怖症とか先端恐怖症とか、みなさん何かしら怖いものってあると思うんです。そういうものを展示で、たとえば壁からハサミとか鉛筆とか、あらゆる“先端”が突き出てるコーナーがあったり、実際に見て、感じてもらう仕様になってます。
司会:その展示のコアな部分を小説でもお書きになったとか?
梨:結局、その人が何に恐怖を感じるのか? というのは、もっとも根源的な、その人のアイデンティティといってもいいものなんじゃないかなと。そのことを深掘りしたときに見えてくるものについて、どうしても小説で表現してみたいなと思って「恐怖症店」という短篇を書きました。
小池:いまちょっと拝読したんですが、店主と呼ばれるひとりの女が、様々な時代や場所に現れて、人間に恐怖症を売るわけですね。僕はこれ、すごく面白いと思いました。落ち着いたこのテイスト自体も魅力的ですが、いまおっしゃった展示会と根っこが一緒っていう、そういうひねりっていうんですかね。そういうのすごく面白いと思います。
梨:ありがとうございます。私もこの小説はうまくいったんじゃないかなと。我ながら手応えがあったというか。

