北海道では人口密集地にも出没
一般的に、ツキノワグマは臆病な性質で、自分から積極的に人を襲いにくることはまれとされる。クマは山の中に住み、人間は平地に住むという棲み分けが成立していれば、クマと人間が平和に共存することも可能なはずだ。
だが近年、エサとするブナやナラの実が異常気象の影響で不作となることが増え、クマが人家の多い地域や、市街地周辺まで進出してエサをあさったり、人を襲うケースが増えている。
9月11日には福島市内で民家の2階にクマが侵入する事件が起きている。
2021年には札幌市東区の住宅街にヒグマがあらわれ、次々に人を襲い、4人が重軽傷を負った。陸上自衛隊丘珠駐屯地にもあらわれ、自衛隊を襲ったのち、駐屯地を横切って茂みの中に消えていったという。
最終的にハンターによって駆除されたが、道警は機動隊を含む警察官105人、車両39台、ヘリコプター3機を投入するなど、大捕り物となった。
東区はJR札幌駅の北側にあたり、サッポロビール博物館や札幌丘珠空港が位置し、住宅街として知られている。
ヒグマの多い北海道とあって、札幌市に出没することは珍しくないが、西区や南区など山あいの地域だけだと思われていた。
それが、住宅密集地である東区にも出没したため、多くの関係者に衝撃を与えたのである。
北海道に生息するヒグマと、本州に生息するツキノワグマは性質が異なるため、同じ行動をとるとは限らないが、クマ対策の必要性を考える上では重要な事件だと思われる。
高尾山に登るときも「クマ対策」は必要
東京都でも住宅密集地にクマが出没する危険性はないのか。
東京都環境局多摩環境事務所自然環境課長の上原氏は、「一般論として、東京都にも生息しているツキノワグマは臆病な性質で、人間の気配を察知すると逃げていく。しかし最近は、人里に下りてくることもあり、遭遇すると痛ましい事故になることもあります」と話す。
「クマは夏の時期が繁殖期で、秋には冬眠に向けて食欲を増し、多くの餌を求めて行動が活発になる時期です。生態を知り、クマに出会ってしまった時の対応について知っておくことが重要です」(上原氏)