ヌード写真などはほぼないのに「有害図書」に指定
指定番号1として、最初に指定された不健全な図書は、辰巳書房(現辰巳出版)から出版された『紳士専科』という雑誌になる。まだネットなどが一般的に普及する以前のエロ本を読んでいた40代でも、この本がどういうエロ本なのか想像がつきにくいのではないだろうか。
エロ本というと、ヌード女性のグラビアがページを埋め尽くしているようなものと想像するかもしれないが、この本はほとんどが読み物記事で構成されている。これは昭和39年当時にはよく見られたタイプの大人向けの雑誌で、実話系エロ本と呼ばれている。
もう少しわかりやすく言うと、今の週刊文春のような週刊誌の記事をすべて男女の事件簿、SEX講座、体験・告白投稿、風俗情報などで埋め尽くした感じだ。多くはないが、ヌードグラビアも数ページ入っている。主に20代以上、仕事を持っている男性が楽しめそうなエロ記事で構成されているが、まだグラビア中心の雑誌などは高価な時代で、このような手軽で安価な読み物系のエロ本が大衆にはもてはやされてた。
見ようと思えば、ネットでもっと際どい無修正のヌード写真などが簡単に見れる現在において、このような本が大人の男たちの楽しみになっていたとは、今の若い人には想像しにくいだろう。当時の大人たちがどのようにエロを享受していたかなどを知る良い資料になるのではないだろうか。そして、東京都で一番最初に不健全というレッテルを貼られる不名誉な雑誌にもなったわけだ。なにはともあれ、8条指定図書の歴史はここからはじまった。
