指定番号順では異なるが、同じジャンルの指定図書をまとめて紹介しよう。指定番号2の『実話と秘録』(広晴社)、指定番号5の『女の手帖』(手帖社)、指定番号6の『特集 夫婦生活』(手帖社)は、どれも『紳士専科』と同じ読み物系エロ本だ。(『特集 夫婦生活』だけは、実際に指定された号を入手できなかったので、昭和40年11月号で代用)。

1964年に指定された1つ『実話と秘録』昭和39年12月号」

「医学」の皮を被った有害図書も

 しかし、手帖社から発行されている『女の手帖』、『特集 夫婦生活』の2誌は、読み物系でも実話誌とは少し毛色が違う。主に結婚した男女向けの性生活をアドバイスする記事を載せた雑誌になっている。

 それでは単なる性教育書でありエロ本(不健全)ではないと思われるかもしれないが、実はエロ本をカモフラージュした雑誌と言ってもいい。俗に「性科学本」「夫婦生活本」と呼ばれるジャンルで、中身はかなり下世話で扇情的な記事で埋められている。

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『女の手帖』 昭和39年12月号。科学や健康でカモフラージュした有害図書とみなされた

 例えば記事には◯◯医学博士、という本当に居るのかどうかわからない博士監修の精力増強の秘訣、夫婦の営みの工夫に関するアドバイスから激しい運動にも耐えられる腰を作るための運動法など、いわゆる性技に関する内容が多くみられ、扇情的な見出しや内容で埋め尽くされている。

 夫婦の営みは国家の繁栄を支える重要な知識、という建前を謳った当時の規制避け手段でもあったわけだ。戦後すぐに人気になったカストリ雑誌が廃れて以降、大ヒットとなったこの「夫婦生活本」ブームであったが、さすがにこの頃になると、その建前効果も薄れてきたのであろう。

 この号ではないが、昭和43年、第69回東京都青少年健全育成審議会にて、『夫婦生活』(手帖社)についての議事録が残っている。そこにはこう書かれている。

「それから夫婦生活医学カードはここにかいてあるとおり、屋外車の中あるいは部屋の中における性行為のいろいろな体位をカラーとか立体であらわしているもので、どこが医学的なものか解釈に苦しんだのですが、当然指定でけっこうだと思います」

 このように、カモフラージュはすっかり見透かされてて、エロ本判定されると同時に青少年に対しても不健全なエロ本として指定されている事がわかる。

次の記事に続く 『ベルセルク』『バガボンド』すら児童ポルノとみなされ…1990年代に起こった「有害コミック」「不健全図書」騒動とは何だったのか

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。