プロデューサーである藤井健太郎自身も「仕事の転機になった」と話す『水曜日のダウンタウン』は今年12年目を迎えた。2024年、MCである松本人志の活動休止を乗り越え、現在も『水曜日のダウンタウン』(TBS系)は『水曜日のダウンタウン』であり続けているように見える。

 ダウンタウンという「王道」は藤井に何をもたらしたのか。ダウンタウンという一大カルチャーへの思いと、その先に見据えた未来について聞いた。(全3回の3回目/はじめから読む)

藤井健太郎さん ©山元茂樹/文藝春秋

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自由度が高い=面白いというわけではない

――企画・演出を手掛けた『大脱出3』が配信中ですが、TBSの社員である藤井さんがDMM TVで配信番組を作ることと、地上波で番組を作ることとは大きくどんな違いがあると思われますか。

藤井健太郎さん(以下、藤井) そんなにないですかね。何かあるかな。

――よく言われるのは、コンプライアンスに関してですよね。地上波は厳しくて、配信は若干緩くなる。

藤井 違いがなくはないですけど、その範囲は当然、場所場所によって決まっているじゃないですか。地上波だったら大体この中でやってねっていう。配信だったらもうちょっと、広がる部分が多いのかなとは思うけど、ものによっては逆に狭まる部分もあるし。こういう表現はオッケーだけど、こっちは厳しいみたいな。地上波よりも配信のほうが厳しい部分もあったりするんですよ。

 かたちがちょっとずつ異なる入れ物の中で、そのかたちに合った番組をやるというだけなので、別にそこに差はそんなにない。当然、自由度が高いほうがいいはいいんですけど、その分格段に面白くなるかと言われると、そういうことでもないかなという気もします。表現する場は大きくあったほうがいいけど、どこにでもそれを求めているわけでもないので。

 

――これも私の勝手なイメージなんですけど、藤井さんはそういう縛りみたいなものがあればあるほど、システムやルール作りに燃えそうな。

藤井 どうなんですかね。あんまり意識してないですけどね。別に「コンプライアンスくそくらえ」と思っているわけでもないし。不便なこともあるけれども、ルールなら守るしかないし、言われた中でやりますよという気持ちではいますけどね。

 でも、実際地上波で人を首まで埋めて放置するのはダメと言われたから、じゃあ配信で……とはなりました。そういう意味では範囲がそれぞれ違うこと、場所によって違うルールがあるのは、それはそれで今はいいことだなと思います。