首まで埋められたクロちゃんと、特殊な部屋に閉じ込められた芸人たち。彼らは無理難題をクリアしてこの過酷なシチュエーションから脱出できるのか。

 2023年に第1弾が配信され、人気シリーズとなったDMM限定バラエティ『大脱出3』がいよいよ最終章へと突入する。この番組を企画・演出するのは、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などを手掛ける藤井健太郎。TBS社員である藤井が局を脱け出してでも果たしたかったある一つの「悲願」について聞いた。(全3回の1回目/続きを読む)

藤井健太郎さん ©山元茂樹/文藝春秋

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「配信向きのものって何だろうな」と考えて思いついたのは…

――『大脱出3』大変面白く拝見しました。一気見したので、今とんでもない量の藤井健太郎を浴びたような気分です(笑)。まずはそもそもなぜこの番組に携わることになったのか教えてください。

藤井健太郎さん(以下、藤井) ありがとうございます。配信番組のオファーをいただいて、経験はなかったけれど自分なりに「配信向きのものって何だろうな」みたいなことを考えながら、今までやりたかったけど地上波ではちょっと難しいかなというストックの中からアイデアを膨らませていった感じです。

 たとえば、クロちゃんを首まで埋めてどうやって出てくるのかみたいな。

――『大脱出』(2023年)を初めて見たとき、首まで埋められたクロちゃんがAIと会話するというシチュエーションに驚かされました。 

藤井 首まで埋めて、AIアシスタント的なものとの対話の中で何とかして出てもらう、というのはもともとストックとしてあったけど、地上波ではできなくて。で、どこかで出せたらいいかなと思っていたので、最初はそれを軸に膨らませていったという感じですかね。

「クロちゃん(安田大サーカス)を首まで埋める」というアイディアから始まった『大脱出』シリーズ(DMM TVで独占配信中) ©DMM TV

――クロちゃんを埋めたいというところからのスタート。

藤井 そうですね。首まで埋まってる状態で「OK, Google」とか「Hey Siri」とか言ってたら面白そうだな、みたいな。で、何とかなるんじゃないかと。

――そういうシーンが頭に浮かんできて、そこから企画を組み立てていく感じなんですか。

藤井 別に僕が一人で全部思いついたわけでもないんですけど。それがやりたいなというのはちょっとあって。

 普段、地上波のバラエティだと30分ぐらいのVTRを作っていくことが多いんですが、『大脱出』では全編通すと何時間にもわたる長編を作るわけじゃないですか。長編を作るとなった時に、展開が当然必要になってくるわけで。

 

 でも、もともとは「独立した一話完結の短編かと思いきや、後半で全部つながる」という形にするつもりだったんですよね。いろんな“脱出”をするオムニバス作品だよというふうに見せておいて、実はその後でそれが全部集結して、もう一個大きなゴールを目指すという作りにしたくて。そうすると、配信作品として成立して、かつ、ストーリーとしても面白いものが作れるかなと思いました。