「説」というルールとシステムの中で、時にギャラクシー賞を獲得したり、時にBPO(放送倫理・番組向上機構)に睨まれたりしながら独自の地位を築いていった『水曜日のダウンタウン』(TBS系)。「悪意の人」とも称されるプロデューサー、藤井健太郎はどのような視点で日々番組作りに向き合っているのだろうか。

 会社員でいること、会社内で認められること、自分のやりたい仕事ができること……全てのビジネスパーソンに贈る、藤井健太郎的仕事の流儀について。(全3回の2回目/続きを読む)

藤井健太郎さん ©山元茂樹/文藝春秋

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ダイアン津田とクロちゃん、“はみ出した”ときの面白さ

――以前、「テレビマンは社会的にきちんとしていることが大事」とおっしゃっていて。そういう人じゃないと面白い番組は作れないんじゃないかと。きちんとしている人だからこそ、はみ出した時に面白いということでしょうか。

藤井健太郎さん(以下、藤井) はみ出なくても別にいいですし、はみ出ても、かたちがしっかりしていればはみ出し方が面白くなる可能性は高いですよね。

――最新シリーズが配信されたばかりの『大脱出』(DMM TV)や『水曜日のダウンタウン』で、メッチャはみ出てくれたな、みたいな芸人さんはいらっしゃいますか。

藤井 そうですね。誰かいるかな。

――たとえば「名探偵津田」*が大バズりしたダイアンの津田さんは?
*『水曜日のダウンタウン』で「犯人を見つけるまでミステリードラマの世界から抜け出せないドッキリ、めちゃしんどい説」として放送された人気企画。2024年12月放送の第3弾はTVer歴代最高再生回数を記録した

藤井 「名探偵津田」はまさにストーリーという軸があって、そこの中でどう遊ぶかみたいなことじゃないですか。「犯人を見つける」という、最後にちゃんと戻ってくる軸はあって。もちろん面白くなるような仕掛けは途中途中に作ってはいるんですけど、その中でどう遊んでもらうかというか、オモシロの部分は津田さんの魅力にかなり頼っている企画ですよね。はみ出したということなのか分からないけど、「1の世界」とか「2の世界」とか言い出した時は、やっぱりすごく面白かった。

 

――殺人事件が起きているミステリードラマの世界が「1の世界」で、「2の世界」は1の世界が架空であることを知っているリアルな世界。津田さんすごい。

藤井 あれはもちろん想定してないですよね。「名探偵津田」第2弾のときに、世界線がごっちゃになるタイプの人だというのは分かっていたんですけど。こんがらかったことが、焼き直しじゃなくて、ちゃんとまた新しい方向に転がって面白くなったなという感じ。