「現金倉庫」と呼ばれる日本で起きた“事件”
2022年7月、統一教会の宗教2世によって安倍晋三元首相が銃撃される事件が発生したことで、日本で「信徒たちを相手に詐欺と変わらない献金商売をしてきた」という趣旨の報道がなされ、窮地に陥った。
韓国の評論家などが「(統一教会にとっての)現金倉庫」と指摘する日本での布教活動が困難に陥り、ソウル市龍山に位置した教会施設を2000億ウォン(約212億円)で売却しなければならないほどの危機に追い込まれた。続いて、今年3月に日本の裁判所から解散命令が下されたことで日本本部は存続の危機にまで追い込まれた。
なぜ逮捕に至ったのか?
このような日本と米国での危機によって、統一教会が失地回復をはかるために行ったこと。それが、“尹錫悦政権へのロビー活動”だったという見解も出ている。今回の逮捕までの経緯をあらためて振り返ろう。
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李在明政権は2025年6月の発足直後、「尹錫悦前政権の不正を暴く」ため、120人の検事を動員して3つの特別検事チームを構成した。2024年12月に尹氏が起こした非常戒厳令宣布に対する内乱および外患誘致罪(=外部から国家存立を危なくする攻撃を招くこと)の容疑を捜査する「内乱特検チーム」、金夫人の各種疑惑を捜査する「金建希特検チーム」、そして軍服務中に死亡した海兵隊員の死亡原因捜査に大統領府の妨害があったという疑惑を捜査する「殉職海兵特検チーム」だ。
“疑惑のデパート”と呼ばれてきた金建希夫人
このうち、韓国メディアと国民から最も大きな注目を集めているのは「金建希特検チーム」だ。金夫人は、尹政権を通してあらゆる疑惑に包まれ、保守からは「政権のアキレス腱」と、進歩陣営からは「疑惑のデパート」と呼ばれてきたからだ。
「金建希特検チーム」は、40人の検事を含む計205人の捜査官を8つのチームに分け、16件の主要疑惑に対する捜査を進めてきた。16件の容疑には「株価操作疑惑」、「Diorバッグ収賄疑惑」、そして政権の人事や「国民の力」党の公認に介入したという「国政介入および人事介入疑惑」などが含まれているが、国政介入および人事介入疑惑の捜査で捕らえられた「乾真法師」というロビイストと金夫人との関係が、韓氏の逮捕への引き金となった。
乾真法師(本名:全成培)は韓国仏教界では「僧侶ではなくシャーマンだ」という疑惑がもたれている人物だ。2013年頃から金夫人が運営する会社「コバナコンテンツ」をサポートしながら、彼女との親交を深め、2022年の大統領選挙では、当時「国民の力」党候補だった尹錫悦氏の選挙運動を支援した。だが、乾真法師が国政介入をしているとして、「尹夫妻のシャーマンスキャンダル」と糾弾された。
