その後、乾真法師は政治の表舞台から姿を消したが、尹政権発足後、金夫人との関係を利用して、「国民の力」党の公認候補選定に介入したり、政権にコネを作りたい企業や団体から巨額の金を受け取ってロビー活動をしたりしてきた。
そして、数多くのロビー事案の中でも、特検チームが「最も確実な状況」と証拠をつかんでいるのが旧統一教会関連の疑惑だ。
特検チームは、尹前大統領が大統領選に当選直後の2022年3月、旧統一教会の尹永昊元世界本部長が、尹前大統領と1時間にわたる面談を行ったことに注目。この席を取り持った人物が乾真法師だという事実を突き止めた。
尹元本部長は韓総裁の秘書室事務総長とヒョジョン国際文化財団理事長を歴任し「韓総裁の右腕」と呼ばれるなど、“統一教会のナンバー2”にあたる人物だった。尹前大統領との面談では、1.カンボジア・メコン川敷地開発ODA(公的開発援助)プロジェクトへの参加、2.国際連合(UN)事務局の韓国誘致、3.教育部長官の統一教会行事参加、4.統一教会のYTN放送局買収、5.大統領就任式への招請などを要請したとされている。
ディオールやシャネル、高級ブランド品を金夫人に
「尹錫悦氏から統一教会のビジョンについて暗黙的な同意を得た」と判断した尹元本部長は、その後、金夫人への贈り物を用意した。尹元本部長は2022年4月と7月に高級ジュエリーブランド「GRAFF」の6000万ウォン相当(約630万円)のダイヤモンドネックレスと1000万ウォン相当(約105万円)のシャネルバッグ2つを購入し、乾真法師に渡した。その後、金夫人の秘書がシャネル売り場を訪問し、200万ウォン(約21万円)余りを追加してバッグを交換した事実も明らかになった。
ただ乾真法師は「秘書が贈り物をなくしたせいで金夫人には渡せなかった」と主張し、金夫人も「受け取っていない」と容疑を否認している。旧統一教会側も「教団は知らず、尹永昊氏個人の勝手な行動だ」と主張している。
特検チームはこの事案が旧統一教会が主体となった“政界ロビー活動”であることを確認するため、7月18日、韓総裁の居住地である「天正宮」をはじめとする旧統一教会の施設や、系列会社を対象とした大々的な家宅捜索に乗り出した。
「ハンギョレ新聞」の報道によると、この家宅捜索で天正宮の韓総裁が居住する空間にある金庫からは、ウォンはもちろん円とドルを含む数百億ウォン相当の札束が見つかったという。特検は金庫の金は「韓鶴子総裁の秘密資金」として政界ロビー活動などに使われたと見ている。

