特検チームは、2022年の大統領選挙以前から統一教会が資金と信者を動員して尹錫悦候補を支援してきた状況をつかんでいる。さらにこれと関連して、韓総裁が、尹錫悦候補に投票するよう信徒に指示したという証言や証拠も出ている。2022年1月に権性東「国民の力」党議員を通じて尹錫悦候補に1億ウォン(約1050万円)の現金を渡し、「国民の力」党の市・道党委員長らにも約2億ウォン(約2100万円)の政治資金を提供した状況も把握された。
他にも、2023年3月の「国民の力」党の党大会では、権性東議員ら尹大統領の側近たちを指導部に押し上げるため、統一教信者を「国民の力」に集団入党させたという状況もつかみ、旧統一教会と「国民の力」党との癒着疑惑まで捜査範囲が拡大している。
「週刊文春」(2022年11月10日号)が報じた韓総裁を含む教会の幹部らが米ラスベガスで600億ウォン(約63.7憶円)規模の賭博をしたという容疑についても再捜査している。「週刊文春」の報道前から、韓国警察は同事件について内偵捜査を行っていたが、正式な捜査にはつながらなかった。だがその過程で「権盛東議員が警察の内部状況を教会側に知らせ、教会が捜査をもみ消すためにロビー活動を行った」というのが特検チームの見解だ。警察にも韓総裁の金庫から出た秘密資金が渡されたものと見られているのだ。
韓国内では厳しい声が
以上の容疑と関連し、特検チームは韓総裁を斡旋収賄、政治資金法違反、業務上横領などの容疑で逮捕状を請求し、逮捕に至った。当初、旧統一教会側は、特検の家宅捜索に強く反発していたが韓総裁の逮捕状が出た直後、「裁判所の判断を謙虚に受け入れる」とし「国民に心配をかけた点を謝罪する」と態度を変えた。韓国内の厳しい世論に屈したのだろう。
韓国検察が把握した旧統一教会の韓国内資産は3兆ウォン(約3160億円)規模で、不動産、レジャー、海運、建設、流通など10余りの事業体を傘下に抱えている。もし韓総裁の逮捕が拘束起訴につながれば、総裁の空位をめぐって、文鮮明氏の死後のような激しい権力闘争が起きる可能性もあるようだ。
